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貿易収支赤字への転落が鳴らした警鐘
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜

更新日:2012年02月01日

2011年の貿易収支が31年ぶりに赤字になった。確かに、2011年には多くの「想定外」のことがあった。しかし、もっと深いところにその原因があるのではないか、と著者は考える・・・。
 


 
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31年ぶりの貿易赤字によるショック

2兆4927億円の赤字を記録した、という2011年の日本の貿易収支が最近発表された。このニュースを耳にした時、とうとうその日が来たかと内心の動揺を隠せなかった。第2次石油危機で原油輸入額が膨らんだ1980年以来、31年ぶりの赤字への転落だと日本のメディアが騒いでいる。内心の動揺は外国人の私にもあったが、まったくの予想外だったかというと、そうでもない。ある種の予想はすでにしていたからだ。しかし、実際にそのニュースの第一報を受けた時は、それでも動揺してしまった。このニュースの重大さはまさにそこにある。

今年で来日27年を迎える私から見れば、自分の人生の中で最も貴重なこの四半世紀強の歳月を日本に捧げてきた。すでに日本とは運命共同体の一構成員として結ばれていると思う。その意味では、貿易赤字に陥った日本の現状から目を逸らすことができない。だからその分、このニュースの第一報を受けた時、心痛とショックを同時に覚えた。

韓国メディアは「輸出大国の日本が貿易赤字国に」「日本の時代は終わった?」と捉え、輸出大国だった日本の地位が落ちてきている、と報じているそうだ。

日本の専門家の中にも、2010年代に日本は海外からの配当などを含めた経常収支も赤字に転落して、経常赤字になると予想する人や、このまま行くと「日本の国力が衰退してしまう」と警鐘を鳴らすエコノミストがいる。

2011年の貿易収支が31年ぶりに赤字になったことを「悪い転換点だ」と見る日本企業の経営者もいる。

確かに、2011年には多くの「想定外」のことがあった。日本国内に限ってみると、3・11の東日本大震災、津波、原発事故、放射能汚染、円高などが挙げられる。これらの「意外」な出来事が日本を貿易赤字国に追いやったと見ることもできる。国際的には、ヨーロッパ発の金融危機が多くの国々に大きな打撃を与え、世界経済も日本の輸出もそのあおりを受けて低迷してしまうという解釈もそれなりに説得力がある。

しかし、もっと深いところにその原因があるのではないか、と私は思う。

中小企業の海外進出を支える体制構築を

貿易収支の赤字への転落はある程度、予想できたものだと思う。事前にその兆しはいろいろな形で出ていた。たとえば、2010年11月14日付読売新聞が、円高による輸出の低迷と欧州の財政・金融危機による世界経済の減速で、日本の大手企業が5兆円も減益してしまった、と報じていた。

一方、厚生労働省によると、2011年7月に生活保護を受けた人は日本全国で205万人を超えた。実はこの数字は戦後の混乱期の水準を上回って、過去最多となっている、という。

経済産業省によると、従業員4〜29人の企業の製造出荷額は1990年に比べて43%も減っているという。一方、産業集積地にある中小の工場は減少が続いている。私が住む東京都墨田区も中小企業が多い区として知られる。しかし、10年末の従業員数が4人以上の工場数を2年前と比べると、墨田区では23%も減少してしまった。埼玉県川口市(同21%減)、東京都大田区(20%減)、兵庫県尼崎市(19%減)、大阪府東大阪市(15%減)と続く。

東京のとある信用金庫の会長が、「さらに2年間経てば、同じ規模の中小企業が消えてしまう。早く手を打たないと、日本の中小企業が再起不可能になってしまう恐れがある」と経済情勢の厳しさを指摘している。

まさしくその指摘の通りだと思う。貿易収支の赤字への転落は、日本経済の将来の厳しさを象徴する一つの出来事に過ぎない。そこに潜められたシグナルをきちんと読みとらないと、さらに大変な結果になる。

ユニクロの柳井正さんが、日本にとどまることは企業にとって最大のリスクだと指摘したことがある。円高や大手企業の海外シフトを時代の背景にして、中小企業も海外進出を加速している。国際ビジネスを進めるために必要な人材、経験に乏しい日本の中小企業の海外進出を力強く支えるシステム、体制の迅速な構築が求められている。時代から与えられた新しい課題でもあると思う。筆者もこのサイトの運営側のWizBiz社も、多くの力を結集して、この課題に果敢に挑んでみたいと意気込んでいる。

著者プロフィール

莫 邦富(Mo Bang-Fu)

1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。
『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。
現 在、三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング会報誌の中国ビジネスクラブにて「データから見えてくる、これからの中国マーケット」、ダイヤモン ド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」などのコラムを好評連載中。
博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。大妻女子大学特任教授。
http://www.mo-office.jp/