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莫邦富的視点
企業誘致に失敗した遼寧省訪日団が残した課題
莫 邦富(Mo Bang-Fu)

更新日:2009年05月27日

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知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続ける莫氏によるコラムです。
遼寧省の陳政高省長が省政府の幹部、省内14都市の市長など総数200人にものぼる巨大な訪日団を連れて、日本にやってきたのだが、公費による観光ではないのかとメディアから厳しく批判された。著者はこのような企業誘致方法はすでに時代遅れになっているという。


 
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5000万円の税金を捨てた遼寧省の高官たち

今年2月3日から7日にかけて、遼寧省の陳政高省長が省政府の幹部、省内14都市の市長など総数200人にものぼる巨大な訪日団を連れて、日本にやってきた。訪日目的はいうまでもなく日本企業の同省への投資誘致である。しかし、結果としては投資の合意に辿りつけた案件は一件もなく、約5000万円の経費を使ったこの訪日行動は、ただの公費による観光ではないのかとメディアから厳しく批判された。

香港の時事雑誌にこの暴露記事を書いたのは、在日中国人ジャーナリストだ。経済研究所の研究員や中国語メディアの関係者などのコメントを上手に使い、事実関係もかなり調べていたので、記事が掲載された後、すぐに中国のインターネットサイトに転載され、大きな反響を呼んだ。

その想定外の出来事に狼狽した遼寧省政府は、表に出て応戦すれば、国民からより厳しい批判の放火を浴びせられるに違いないと判断し、水面下での火消し作戦に追われたと思う。その成果として、数日後、この問題を取り上げたサイトにアクセスしても、同記事に辿りつかなくなってしまった。記事はいつの間にか削除されてしまったのである。

旧態依然としたこうした企業誘致手法に対してはもちろん私も批判している。誘致会への参加を誘われても、ほとんど顔を出さない。時間の無駄使いだと判断しているからだ。しかし、かといって、これが公費による観光かといわれると、確かにそういわれても弁解できない一面もあるが、それは違うだろうと思う。

いまの中国の地方政府の役人にとって、最大の目的は出世である。企業誘致に成功すれば彼らの実績につながる。だから懸命にやっている。派手さを好む上司との付き合いもあり、なかにはこうした古い誘致方法では目的達成ができないとわかっていながら、付き合いで同行する地方幹部もいるはずだ。その意味では、遼寧省政府訪日団の日本訪問を公費による観光と決めつけるのは慎重さに欠け、当事者に不公平な発言にもなる。

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プロフィール

莫 邦富(Mo Bang-Fu): 1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。
『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』『日中「アジア・トップ」への条件』などがある。
現在、朝日新聞be(土曜版)にて「mo@china」を連載中。博報堂スーパバイザ。東京経営者協会評議委員。東京メトロポリタンテレビジョン放送番組審議委員。中国山東省青島市開発区顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。
http://www.mo-office.jp/