経営者の味方「0円ビジネスマッチング WizBiz(ウィズビズ)」

WizBiz:HOME >  ビジネスマガジン >  ビジネスコラム >  莫邦富的視点・21世紀の大国中国を見つめる  >  自転車使用者にやさしい社会への転換を期待する  詳細


自転車使用者にやさしい社会への転換を期待する
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜

更新日:2017年06月27日

撤去された自転車を取りに行くと、5000円もの金額が罰金として徴収されているのを知って、著者は驚いたという……。
 

自転車を悪と捉える日本の現状と行政の意識

環境への負担を減らすためという目的もあり、大都市部では、自転車が存在感を日を追うかのように大きく増している。これは環境保護の意識が高い欧米だけでの社会現象ではなく、日本や中国でもますます重要視される現象になりつつある。

東京の街角を見ると、自動車道の横に自転車が走るレーンを設けたり、駅や大型商業施設の前に駐輪場を増設したりする動きはまさにこうした社会現象の裏付けだと思う。こうした変化を私も支持すべきだと思って、記事に取り上げたりしていた。もちろん、これで事が足りたとは考えていない。自動車優先の社会から自転車優先の社会へ変化させていくには、まだまだいろいろな努力が必要だと認識しているつもりだった。

しかし、先日、偶然、墨田区の撤去自転車の保管所という現場を見たら、撤去された自転車の多さにびっくりしてしまった。もちろん、自転車を無責任に放置するかのように置いてしまった人間の遵法意識が問われるべきところも多々あるが、使いやすい駐輪場があまりにも少ないという社会インフラの不備不足の問題がより大きく深刻にクローズアップされたと私は思う。

しかも撤去された自転車を取りに行くと、5000円のもの撤去料金を実際、罰金として徴収されているのを知って、さらに驚かされた。新品の自転車の価格を考えると、その半額か三分の一の金額に相当するものだ。自動車の関連罰金と比較してしまうと、その金額設定の乱暴さがより一層印象的になる。

そこまで撤去料金を取っているなら、そのお金を駐輪場の増設などに活用してもらいたい。ところが、実際、保管所の空気入れも使えないほど、必要な備品もそろえていない。

行政側の姿勢を見ると、撤去された自転車を放置自転車と勝手に決めつけたうえ、歩行者の通行を阻害し、特に障害者や高齢者の安全な通行を脅かし、 さらに、災害時や緊急時の交通の障害となるほか、都市景観を損なうなど様々な弊害をもたらす大きな社会問題となっているとまで決めつけ、宣伝している。

「環境にやさしい」「住民にとっては手軽な移動手段」といった認識はまったく感じられていない。

自転車シェアリングの黒船、来たる

そこで、日本のこうした行政が作った秩序に波紋をかけるような黒船が出現した。

中国でものすごい勢いで普及している自転車シェアリングサービスが日本に登場した。中国発で世界最大の自転車シェアリングサービス「Mobike」(中国語では、摩拝単車)とは6億ドル(約670億円)を調達したうえ、6月下旬に入ってから福岡市と札幌でのサービスを開始する、と宣言した。

関係報道によると、Mobikeは、2016年4月22日に上海市でローンチして以降、中国を中心に100以上の都市で利用されている。現在のところ、登録利用者数は約1億人、1日の利用回数はピーク時で2500万回、運用されている自転車の台数は500万台を超えるなど、急速に成長している、という。

だた、これまでは、Mobikeの進出先は100都市と言ってもいるが、シンガポールを除くと、このほとんどが中国国内だ。しかし、同社は最近、アジア以外の都市で初となる英国のマンチェスターと、マンチェスターの郊外ソルフォードで運営を開始し、今年末までには200都市へと拡大する予定だ、と発表している。

福岡市と札幌を最初の進出先として選んだMobikeはおそらく駐輪場が貧相な日本の大都市を避けて作戦を展開させる考えかもしれない。ビジネスモデルとしては世界の最先端を走る自転車シェアリングサービスが果たして保守的な日本社会に根を下ろせるのか、まだ予断を許さない。

著者プロフィール

莫 邦富(Mo Bang-Fu莫 邦富(Mo Bang-Fu)
1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。 『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。 現 在、三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング会報誌の中国ビジネスクラブにて「データから見えてくる、これからの中国マーケット」、ダイヤモン ド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」などのコラムを好評連載中。 博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。大妻女子大学特任教授。
http://www.mo-office.jp/