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北京「海龍」の閉幕と蔦屋の躍進に見る今日の実店舗の運営秘訣
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜

更新日:2017年03月29日

3連休の最後の日である3月20日、2017年3月2日にオープンしたばかりの「柏の葉t-site蔦屋」へ出かけた筆者。車のナビでも携帯電話でgoogle地図を調べても出てこないこの新しい「書店」はもう人気沸騰……。
 

淘汰されるべくして淘汰された北京の電子製品専門大型店

来るべきことはやはり来た。北京市中関村にある電子製品専門の大型店「海龍」が、先頃、静かに幕を閉じた。17年間にわたった営業の歴史は、空きビルの塵とごみに化してしまったかのような寂しい閉幕だった。

1995年はウインドウズ95の誕生で、北京・天津・上海・広州・杭州などの大都会を中心にパソコンが急速に普及した。その年の半ばまでで、中国の所有するパソコン台数は、はじめて70万台という大台を越えた。コンピュータや関連設備を販売する専門店の集合体である「電脳城」が都市部に相次いで現れた。当時、広州だけでも「東城」「西城」「太平洋電脳城」などがすでに5カ所あり、1000社近くのメーカーがこれらの「城」に集中している。

一方、中国のシリコンバレーと称される北京市海淀区の中関村周辺には、50以上の大学と150前後の研究機関が集中しており、中国でハイテク技術人材がもっとも密集する地域となっている。コンピュータを販売する店が立ち並ぶので、「電子一条街」ともいう。往年の秋葉原電器街なみの賑わいだった。当時、どの店も景気は良かった。1999年に開業した「海龍電子城」はその中の超優良大型店だった。

のちに、中関村は中国国内最大を誇る電子製品の集散地にもなり、太平洋広場、中関村e世界、鼎好と海龍は中国の電子製品の消費動向を導く4つの大型店だった。

その17年間の歴史も時代の変化に勝てなかった。その敗因の一つは時代の変化に伴う消費者の意向の変化をつかみきれなかったことにあると思う。信用とブランドイメージを著しく損なった詐欺事件などの多発もその死を早めたとも言えよう。

当時、何度も取材しただけに、海龍の閉幕に一縷の郷愁を覚えるが、残念がる気持ちはまったくない。淘汰されるべく淘汰された存在だと認識したからだ。

時代の心を掴んだ蔦屋の躍進

一方、視線を日本に戻すと、蔦屋書店の躍進に目を見張った。以前はなんだかCD、DVD等のレンタル事業を運営する「貸本屋」といったイメージの強いTSUTAYAは、代官山・蔦屋書店から、「書店」と名乗りながらも、本を売るためだけの施設ではなくなり、本や音楽、映画が揃う場となった。ネットでは、「そこで過ごす『時間』を楽しんでいただけるような空間を目指す」場所として捉えられるようになった。

2011年12月5日に、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、東京・代官山に新たなTSUTAYAとして「代官山 蔦屋書店」をオープンした。ある意味では、この日から、日本の書店の運営に革命が起きた。

緑に包まれた閑静な住宅街にできたこの蔦屋書店のコンセプトは“森の中の図書館”だという。“プレミアエイジ”と呼ぶ団塊世代前後の客層をターゲットに、落ちついた環境の中で趣味を楽しめるような施設を構築した、と報じられている。

1983年、TSUTAYAが創業した時、20〜30代の若者がその客層の中心だった。若年人口減少への対応と、再度TSUTAYAに足を運んでもらう狙いというのがあるから、このようなセンスと利便性に訴える「書店」、いや時間を楽しむ空間を作ったのだ。

殺風景な自動車道(国道16号)の横にあり、周辺はまだ空き地がいっぱいある「柏の葉t-site蔦屋」が2017年3月2日にオープンしたばかりだ。住所は千葉県柏市若柴227-1となっているが、車のナビでも携帯電話でgoogle地図を調べても出てこないこの新しい「書店」はもう人気沸騰だ。

3連休の最後の日である3月20日を利用して覗きに行ったら、その人気ぶりに圧倒された。インターネットとネット販売の隆盛で実店舗の運営が苦しいと言われているが、蔦屋の連勝にいろいろと考えさせられている。その勝因の裏には、北京の海龍の敗因が見え隠れしているような気がする。

著者プロフィール

莫 邦富(Mo Bang-Fu莫 邦富(Mo Bang-Fu)
1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。 『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。 現 在、三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング会報誌の中国ビジネスクラブにて「データから見えてくる、これからの中国マーケット」、ダイヤモン ド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」などのコラムを好評連載中。 博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。大妻女子大学特任教授。
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