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日本入国時の手続きに現れた新変化に「いいね」を
〜莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜

更新日:2016年09月14日

かつては再入国時に使う半券に「あなたは、現在、現金をいくら所持していますか?」という記入欄があったのだが、この欄がきっかけとなり、筆者と入管職員の間に険悪な空気が漂ったことがあるという。
 


 
莫邦富氏
 
 
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横柄な入管職員に噛みついた私

4年前の2012年2月25日の昼ごろ、3泊4日の駆け足日程で中国視察を終えた私は、成田空港に降りた。そして、いつもの通り、入国手続きをするため入管に進んだ。なにも考えずパスポートを窓口に差し出したところ、入管職員との間で次のようなやり取りが行われた。

職員 現金はいくらもっています?
えっ? 現金ですか? どうして?
職員 (パスポートに挟んでいる再入国出国カードをちょっと見せて)そこに記入していないから。

出国の際、再入国時に使う半券にある「あなたは、現在、現金をいくら所持していますか?」という欄を除いて、他の記入すべきところをすべて記入したので、日本に戻ってきたとき、すべて記入済みだと思い込み、パスポートを提出した。それに気付いた私は素直に答えた。

5万円くらいです。ところで、私は日本に永住しているので、こういう内容の記入はまったく意味はないのでは?
職員 カードにある以上は記入しなければなりません。
それはそうですが、改善したらどうでしょうか。今、たとえ日本永住者ではなくても、観光客だってクレジットカードを使っているのですから、いちいち所持している現金額を確認するのはあまり意味がないのでは? 上の方にこうした改善を求める声を伝えてください。

ここまでは互いに穏やかな会話だったが……。

職員 私は一個人でしかありません。そのようなことはできません。
それはないでしょう。確かにあなたは一個人でしかありませんが、ここに座っている以上は国を代表して権力を行使しています。だから、利用者の声を伝えるのも仕事の一部です。
職員 ご意見があれば、自分で電話をかけてください(電話番号を探し始めた)。

この辺からは空気が険悪になった。

(絶句してその職員の当直番号を探す。しかし、一切の表示も見当たらない。そこで)そんな勤務態度なら、お名前を教えてもらえませんか。
職員 個人情報は一切教えません。
じゃ、さきほどの電話番号を教えてください。
職員 「……」(黙ってどこかに電話をした)

すぐに数人の中年の入管職員が私の後ろに現れた。私はいきさつを説明した。「所持金額を教えたうえ、その改善を求めた私のどこが悪いのですか。当直番号か名前を教えてもらえませんか」。

さすがに、中年の職員はすぐに自分のIDカードの番号と名前を記入した面を見せてくれたうえで、私の意見に耳を傾けた。それを見た窓口の例の職員が慌てて立ち上がり、制服のボタンを外し始めた。なにをするのかを見ると、制服の中に隠していたIDカードを取り出して、番号を見せてくれた。

入管は権力行使者の機能だけが強調されており、本来の行政サービス精神のかけらも感じられない。利用者による監視・監督の機能の構築も完全に無視されている。職員は仕事現場ではIDカードを下げるべきなのに、制服の裏ポケットに隠していても何の咎めも受けない。

当時、私は、この経緯を日本国内のメディアに公開して、入管職員のこうした態度を批判した。そして、利用者からのこうした批判の声がきっと何らかのルートを経由して入管関係者の耳に入り、多少はその態度改善を促すきっかけになるのでは、とも思っていた。

小さな改善も塵も積もれば山となる

4年の歳月があっという間に過ぎ去った。9月に入り、仕事で海外出張することになった。成田空港で出入国カードを記入するとき、ついでに再入国時に使うべき半券の記入も済ませた。そこで記入内容の変化に気付いた。もともと半券にあった「あなたは、現在、現金をいくら所持していますか?」という欄がなくなったのだ。

ああ、私のあの時の提案がこうして現実になったのだ、と感激した。もちろん、これは私だけの提案ではないと思う。きっと多くの利用者からも私と同様の気持ちでこの問題をしていたから、つい体質的に保守的だと思われる入管側を動かしただろうと思う。

観光立国を目指す日本にとっては、入管は外国人が最初に接する「日本」である。「ようこそ日本へ」という歓迎の気持ちの現れも日本の空の玄関から始めてもらいたい。再出入国カードの記入内容の変化はわずかなものだが、これは決して入管という一役所の一小さな改善作業ではない。塵も積もれば山となる。小さな改善も重ねていくうちに、大きな改善になる。だから、大きく見れば、私はこの改善から利用者の意見と不満を吸収できる仕組みができたと評価したい。

入管の現場の改善はおもてなしの日本という国のイメージアップにつながる。再出入国カードの記入内容の変化を確認した私は、入管のこうした態度とサービスの改善に「いいね」を押してあげる。

著者略歴

莫 邦富(Mo Bang-Fu)
1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。 『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。 現 在、三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング会報誌の中国ビジネスクラブにて「データから見えてくる、これからの中国マーケット」、ダイヤモン ド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」などのコラムを好評連載中。 博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。大妻女子大学特任教授。
http://www.mo-office.jp/

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