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中国語・韓国語を敵勢言語と見る危険な傾向
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜

更新日:2016年08月12日

日本政府観光局(JNTO)の統計によれば、2016年1月から6月までの訪日外国人のうち、中国・香港、台湾だけで約610万人。これは全体の52%に達しているというが、……。
 


 
莫邦富氏
 
 
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中国語・韓国語表記を頑なに拒否するJR東海の意思表示

朝、目を覚まして自然にfacebookなどのSNSをチェックしてみたら、「【朗報】JR東海、中国語・韓国語表記を排除していた!!! その理由が正論すぎた……こりゃ誰も言い返せないな他の公共機関も見習うべき!!!」という内容の書き込みがシェアされているものを目にした。

もともとは東京新聞の問題を提起するための記事だった。「大動脈抱えるJR東海中・韓国語対応進まず」と題するその記事の内容は次のようなものだ。

[以下引用]
「日本を訪れるアジア圏の旅行者が増える中、JR東日本や大手私鉄では、鉄道の駅名や乗り場などの案内表示を中国語や韓国語で示す取り組みが広がる。しかし、日本の大動脈の東海道新幹線を運行するJR東海は英語表示のみ。国土交通省は2009年、英語以外での表示の必要性を指摘したが、JR東海は『(複数の外国語を使うと表示の)文字が小さくなる』と反論し、駅での案内表示のあり方に一石を投じている。

駅などでの外国語サービスのあり方について国交省は06年「『おもてなし』の観点から英語以外の外国語でも情報提供を行うことがさらに望ましい」とのガイドラインを提示した。

輸送サービスなどの状況に関して調べるJR東海に対する09年の業務監査でも「他社の駅施設では中国語や韓国語などの表記があるが、JR東海はない」と指摘。「来訪外国人の約七割がアジア圏からで外国人を意識した表記について検討が必要」とした。
これに対しJR東海は「国際的共通語の英語をできるだけ大きな字で記すのが基本」と主張。多言語表示は「限られたスペースの中で文字が小さくなり、見づらくなるおそれがある」と反論していた。
[引用ここまで]

しかも、JR東海は「高齢社会に配慮し日本語を大きな文字で表記している。英語以外の外国語も表記すれば文字が小さくなり読みにくくなる」とし「対応は現状で十分」と主張する。

言語と太平洋戦争の敗北との因果関係

JR東海のこの主張は政治的匂いが強いか、あるいは詭弁しているのかという問題はさておいて、「日本の会社だったら日本語と英語で充分JR東海は正しい判断が出来ているな。何故、敵勢言語の特アを入れるのか理解できない」とシェアする人間の喝采ぶりを見ると、背筋に冷たいものが走るのを覚えた。

いまや故人となった山崎豊子さんの代表作の一つ『二つの祖国』の内容を思い出した。太平洋戦争時代、日本は英語を「鬼畜米英」の言語すなわち敵勢言語として捉え、その学習を禁止していた。しかし、同じ時期に、アメリカ側は日本を打ち負かせるために、日本語を特訓する学校を始めた。言い換えれば、言語の学習問題においても日本はこの時点から敗戦の道に狂奔しはじめてしまったのだ。

facebookに、私は次のコメントを書き込んだ。

「こんなことを嬉々としてシェアしている人間と企業の心の陰湿さと狭さを知っていただくために、敢えて私もシェアしてみます。世も末だ」とコメントを書き込んだ。

観光立国を国の方針として叫ぶ時代に逆行する一部の人間の行動に、あの間違った戦争時代の精神構造が負の遺産として幽霊のように残っていることを体感できた思いがした。

しかし、時代はやはり変わった。少なくとも、私のfacebookのスレッドに書きこんでくれた日本人読者の感想には、危うい道に偏ってしまいそうな危険性を指摘する内容がほとんどだ。民主主義の教育を70年も受けてきた戦後日本を支える日本人の常識も再認識できた。

著者プロフィール

莫 邦富(Mo Bang-Fu)
1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。 『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。 現 在、三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング会報誌の中国ビジネスクラブにて「データから見えてくる、これからの中国マーケット」、ダイヤモン ド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」などのコラムを好評連載中。 博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。大妻女子大学特任教授。
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