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中小企業は知財戦略で飛躍する
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜

更新日:2015年12月01日

累計数250万丁も販売されたネジザウルスという専用工具。この大ヒット商品を開発した会社の社長・崎氏の知財に対する重視の姿勢に感心したという……。
 


 
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大ヒットを飛ばしたとある専用工具

ビジネス誌の書評のコラムを交替で書かせてもらっている。パソコンのフォルダに入っている原稿のファイルを見ると、あと数カ月でもうすぐ10年続くコラムとなるのがわかり、我ながらびっくりした。時間が経つのは本当に速い、と思わず嘆いてしまう。

しかし、その書評の執筆のお蔭で、活字離れや電子メディアにやられていると喧騒されているこの時代でも、ある程度、読書を続けている。

たとえば、最近、書評に取り上げたのは株式会社エンジニア代表取締役社長の崎充弘氏がお書きになった『「ネジザウルス」の逆襲』(日本実業出版社)だ。

ネジザウルスとは、頭の溝がつぶれたネジやさびで固まってしまったネジを外す専用工具のことを言う。しかし、この工具は2002年に発売してから、2015年9月時点でシリーズ累計数250万丁も販売され、年間16万丁以上のペースで10年以上にわたって売れ続けた、という。年間、1万丁も売れれば大ヒットと言われる工具の世界では、爆発的な大ヒットが生まれにくい。だから、その実績に驚いた。同時に、その本の内容にも興味を覚えた。

社員の三分の二は知財技能士

しかし、本を読み始めると、ほかのところにも私は感心し始めた。それは、社長としての崎氏の知財に対する重視の姿勢だ。

「必要があれば弁理士さんの知恵を借りるにしても、経営者自身が知財についてもっと知っておいたほうがいい」と崎氏が強調している。実際、本人の行動もその考えを裏付けている。

知財検定を実施する知的財産教育協会によると、2004年に行なわれた第1回の検定試験以来、2015年4月時点で、これまでの受験者数は約21万人で、およそ6万人の知財技能士が誕生している、という。

その中の一人はほかならぬ崎氏本人だ。2005年に、3級を受験した。それからほどなく2級にも合格した。

それだけなら、私は驚かない。私が感心したのは、崎氏が知財検定試験を受検して以降、社内では従業員にも受検を奨励するようになったことだ。こうして30名の社員がいるこの中小企業の社内に、18名の知財技能士が生まれたのだ。

崎氏によると、こうなると、「知財の知識を踏まえた営業トークができるようになったり、スピーディな新商品開発ができるようになるなど、仕事の進め方も変わってきました」、という。

ネジザウルスという工具は13年間シリーズ累計数250万丁も販売された必然性もそこにあるような気がした。

「中小企業は知財戦略で飛躍する」という崎氏の主張に、私は何度も頷いた。

著者プロフィール

莫 邦富(Mo Bang-Fu)
1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。 『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。 現 在、三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング会報誌の中国ビジネスクラブにて「データから見えてくる、これからの中国マーケット」、ダイヤモン ド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」などのコラムを好評連載中。 博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。大妻女子大学特任教授。
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