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五輪が最後の花火とならなければいいが
ベンチャー・リンク2008年9月号掲載

更新日:2008年08月24日

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中国在住の著者が、自身で見聞きした中国の現状を語ります。にわかには信じがたい話もありますが、本当に中国では今こうなんです。
 


 
百貨店の前の広場ではコピー商品が10分の1の値段で売られている。
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この原稿が掲載される頃には、北京五輪も当初のスケジュール通り順調に進んでいれば終了しているだろう。北京五輪は様々な点で世界の注目を浴びた。例えば聖火リレー。

私が住む町にも6月上旬に聖火がやってきた。数々の混乱を想定し万全の警備体制のもと、閉鎖的な会場で行なわれたため、直接見られた人は少なかった。が、その日は「にわかオリンピック祭り」が繁華街のあちこちで開催され、無料で国旗とオリンピックのミニチュア旗が配られ、町を走るタクシーやバス、バイクや自転車に付けられてはためいていた。

また、オリンピック公式グッズが並んだ高級デパート1階特別展示場の外の広場では、コピーグッズが10分の1の値段で売られていた。いかにも中国らしい光景である。

思えば2008年の中国は、年始早々から北・中南部での大豪雪により多大な経済的被害を受けた。直後の2月に毒入り餃子事件が起こり、日中関係にヒビが入った。その解決も見ない3月には、チベット問題が勃発。その後に世界各地をまわり始めた聖火リレーでは、ヨーロッパやアメリカ、日本などにおいて激しい抗議活動にあった。そしてダメ押しのように起こった四川大地震。地震多発地帯の一画である雲南省に住む私の周囲では「もうオリンピックまで何もなかろうな?」と不安の声が上がった。

ところが、今度は広東省などの南部を記録的な大洪水が襲った。雲南省でも、50年ぶりとされる大雨が数日間続き、町のあちこちで汚水があふれたり、床下浸水したりして被害が出た。 毎年、この時期(日本の梅雨にあたる頃)になると、雨季に入る南部ではよく洪水が起こるのだが、今年の規模は例年になく大きい。広東省周辺では数十人.数百人の死者が出ているという。

こうも度重なる自然災害や政治的事件、事故に「天が中国を見放したのか」と思わざるを得ない。加えて、前々号で言及したように、オリンピックを待たずして始まった経済の失速。上海A株の大暴落(連動して香港株にも影響)、沿岸部不動産バブルの崩壊、そして全国的に止まらぬ物価高。緩やかながら確実に進行している元高により、輸出に頼っていた下請け製造業も、体力のない中小企業は軒並み事業縮小と倒産が私の周囲でも相次いでいる。

かように、コントロール不可能な未曾有の不景気へと既に突入したと考えられる中国において、オリンピックがはたして経済の牽引役となり得るのか、またどこまで人民の不満をそらす効果があるのか、少々疑問だ。

当局は必死にオリンピックの華々しいプラスイメージを宣伝しているが、庶民、なかでも北京市民以外の人々の感情は複雑だ。 「インフラ整備され、観光客がお金を落とすのは北京市だけ(とほかの一部競技が行なわれる地域のみ)の話ではないか」「オリンピックに使うお金があるなら、四川省の復興にまわすべきだ」。 率直すぎるほどの意見だが、これらが私の友人知人たちの偽らざる本音だ。

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プロフィール

五十嵐らん(いがらし・らん)
東京都出身。専門は細胞研究で、東京大学大学院修了(農学博士)。03年に中国雲南省の日米中合弁花卉企業に赴任、いきなり経営者に。05年暮れに独立、現在は農業経営コンサルティング、食品・化粧品開発などで日中を飛びまわる。著書に『世にも不思議な中国人』(ワニブックス刊)など。