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「おから工事」が被害に拍車をかけた四川大地震
ベンチャー・リンク2008年8月号掲載

更新日:2009年10月16日

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5月12日、北京時間午後2時28分、四川省ブン川県においてマグニチュード8.0の巨大地震が起こった。1カ月近く経った6月8日の時点で、死者7万人、行方不明者1万7000人以上、被害金額は5000億元(約7兆7500億円)を超えるという試算も出ている。
 


 
5月20日前後まで、インターネットの各種サイトが服喪の意を表xわして白黒表記やサービス停止、メッセージの発信を行なった。
5月20日前後まで、インターネットの各種サイトが服喪の意を表xわして白黒表記やサービス停止、メッセージの発信を行なった。
 
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この想像を絶する大災害は、四川省のお隣り、雲南省に住む私にとっても大きな衝撃をもたらした。雲南省も地震多発地帯。今回の地震でも1人が亡くなっているし、昨年6月には雲南省プアール市(プアール茶で有名)でマグニチュード6.4の地震が起こり3人が死亡している。そんな中国の地震多発地帯に住む者として、今回の地震は本当に恐ろしかった。もちろん、地震はどこにいてもいつ起こっても怖い。しかし中国においては、「おから工事(強度のない、まるでおからのようにスカスカという意味)」が地震の恐怖を増大させる。

くしくも連載1回目で「購入10年で歪んで住めなくなったマンション」の話を書いたが、まさに建築工事の杜撰さが、ここまで被害を拡大する一因になったことは否めない。そこが雲南に暮らす私にとっても「他人事ではない」恐怖心を生むのだ。

四川大地震について日本では避難先である学校が真っ先に崩壊した様子が映し出されていたが、“公共建築物ほど杜撰な工事で危険”が中国の偽らざる現実だ(ただし、役所は頑丈に作られている)。事実、私も見たことがある。3年ほど前に住んでいた場所の近所に新設された小学校。日本ではブロック塀の支えとして入れられる程度の太さの鉄筋(鉄線)数本が組まれたものを基礎に、たった3カ月で5階建ての建物が完成してしまった。生徒たちの重みだけで崩れるのではないかと、そら恐ろしくなったものだ。

不幸中の幸いという表現が適切か分からないが、この「おから工事」の問題は今回の地震で大きくクローズアップされた。学校倒壊で子供を亡くした親たちの、当局への抗議デモもあった。私の周囲の中国人も、多くが怒りをあらわにしていた。“公共事業における建築=政府役人の中抜き=建築費の減少=手抜き工事”という大人の都合に、子供たちの尊い命が犠牲になってしまったのだから、怒りは当然だ。今回、あらためて中国の庶民に広く認識されたこの悪しき構図が、地震をきっかけに変わることを願わずにはいられない。

そしてもう1つ、今回の地震で多くの中国人がボランティア、募金、献血、物品寄付、と「深い同情心」を示していることに、少し驚いたというのが私の本音だ。なぜなら、中国に長く暮らして実感しているのが、中国社会の「他者への同情・共感心の欠如」だからだ。不信だらけの中国社会において、他人とは敵であり、気を許すと付け込まれてしまう。よって、町には弱者救済や調和を呼びかける、美辞麗句のスローガンがあふれているが、実際は横断歩道を渡る老人にクラクションを鳴らし追い立てる車ばかり。そんな社会で、家族や親戚が被災地に住み暮らす者ならまだしも、そうではない者が率先して募金を行なう姿があちこちに見られ、私としては驚くとともにうれしかった。

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プロフィール

五十嵐らん(いがらし・らん)
東京都出身。専門は細胞研究で、東京大学大学院修了(農学博士)。03年に中国雲南省の日米中合弁花卉企業に赴任、いきなり経営者に。05年暮れに独立、現在は農業経営コンサルティング、食品・化粧品開発などで日中を飛びまわる。著書に『世にも不思議な中国人』(ワニブックス刊)など。