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森永卓郎の経済探偵録
上海からみた中国経済の行方

更新日:2010年06月01日

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 森永氏は今上海に滞在しているという。5年ぶりだそうだ。万博が開催され、活気がみなぎっているのだが、一方で確実に影が忍び寄っていると感じるという。中国ブームもそろそろ限界ではないかと。
 


 
 森永卓郎氏 顔写真
 
 
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万博の経済効果は2兆円

長らくお付き合いいただいた本稿も、今回が最終回となる。ちょうど今、たまたまテレビの収録で、万博開催中の上海に来ているので、いまや破竹の勢いで成長を続けている中国経済の今後の行方を考えてみたい。

「上海は3カ月来ないと表情が変わってしまう」とよく言われる。実際、5年ぶりにやってきた上海は、すっかり近代都市に変貌していた。オフィスビルと高層マンションが次々に建設される状況は続いており、ただでさえ勢力を失ってきた旧市街は、上海万博に伴う開発ブームで、すでに消滅の危機に瀕している。

上海には活気がみなぎっていた。上海万博には、過去最大の246の国や機関が出展した。公式推計では、史上最大の7000万人が来場する見込みとなっているが、来場者のおそらく9割以上が中国人だ。世界の人が集まるというより、中国国民が「世界」を見るために大挙して集まっている。それでよいのだ。2010年1〜3月期の実質経済成長率が11.9%という高成長を遂げている中国の消費市場をなんとか取り込みたいというのが、万博に出展する各国の本音だからだ。

万博の経済効果は、開催期間だけで2兆円にのぼるという推計も出されている。実際、ブームというのは恐ろしいものだ。上海では、ホテルやレストランの予約がむずかしくなっているだけでなく、マクドナルドや吉野家にまで、大行列ができている。

中国の経済成長の源泉は二重経済

しかし、無敵にみえる上海ブームにも3つの点で確実に影が忍び寄ってきていると思う。第一は、慢心だ。上海は急速に発展したため、サービスのレベルが世界標準に追いついていない。例えば中心街でも観光客向けの店を除くと、銀連カード以外のクレジットカードが使えなかったり、簡単な英語さえ通じない。私の宿泊したホテルでは、電源のきていないコンセントがあったり、LANケーブルが壊れていたり、圧巻は半日間お湯がでなかった。そこそこのクラスのホテルに泊まっていたのだが、水で洗髪したのはベトナム訪問以来だ。

こうした問題は時間が解決する部分もあるのだが、厄介なのは、有名レストランなどで「客が来て当然。食べさせてやる」といった態度が目に付くようになったことだ。もちろん、口に出しては言うわけではないのだが、そうした態度が散見されるのだ。これは、かつての上海にはなかった現象だ。

第二は、不動産バブルだ。新市街に建設される高層マンションの分譲価格は、2億円から3億円程度だという。明らかに東京よりも高い。しかも、夜に出掛けても、灯りがついている部屋は全体の1割程度というマンションがたくさんある。投機で取得された物件が多いのだろう。もちろん、急激な成長が続いているうちは、マンション転がしも成り立つのだろうが、成長が止まった途端にバブルは崩壊するだろう。いくら賃金が上がってきたとは言え、普通に働いて買える価格水準をすでに大きく通り越しているからだ。

そして、第三は、物価や賃金の高騰だ。5年前と比べて私が一番驚いたのは、旧市街での物価の高騰だった。上海経済は二つに分かれている。中心部のグローバル経済と旧市街の中国経済だ。例えば、中心市街の商店では、日本を含む外資の商品が圧倒的なシェアを占めている。そこでの物価は、もともとグローバル価格だったので、昔からさほど変わっていない。ところが、純粋中国製品が主流の旧市街の物価も、驚くほど高くなっていた。5年前は1元(15円)あれば、大抵のものが飲み食いできたのが、いまはそれが2倍近くになっている。簡単なスナックを買うだけでも4元、5元と取られるようになったのだ。

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プロフィール

獨協大学経済学部教授 森永卓郎