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森永卓郎の経済探偵録
上海からみた中国経済の行方

更新日:2010年06月01日

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 森永氏は今上海に滞在しているという。5年ぶりだそうだ。万博が開催され、活気がみなぎっているのだが、一方で確実に影が忍び寄っていると感じるという。中国ブームもそろそろ限界ではないかと。
 


 
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中国の経済成長の源泉は、国内に途上国を抱える二重経済だった。その構造を凝縮したのが上海だ。家賃も物価も安い旧市街に庶民が住み、彼らの低賃金を企業が活用することで、コストを抑え、競争力を保ってきた。それは、製造業だけでなく、サービス産業でも同じだ。低賃金層の存在が企業経営を大きく支えてきたのだ。

ところが」、生活コストが上がれば、賃金も上げざるを得ない。実際、賃金は相当上がってきている。例えば、上海万博のために大変な人数のボランティアが街角で交通整理や案内に立っているが、彼らの報酬は1カ月1500元、2万円程度だそうだ。ボランティアでそうだから、一般労働者の給料はもっと高い。ホワイトカラーの月給は10万円近くにもなっているのだ。

もちろん、上海の賃金格差が縮小したわけではない。庶民が高い給与を得るようになると同時に、金持ち層は、ますます金持ちになっていっている。ただ、庶民の物価や賃金が底上げされるということは、国際競争力が減退することを意味する。国際競争力の源泉は現場のコストだからだ。

例えば、私がコレクションしているタカラトミーの「トミカ」というミニカーの生産が、2008年に中国から人件費の圧倒的に安いベトナムへと移った。トミカに中国製が登場してから20年、ついにトミカ製造の舞台が移ったのだ。

ベトナム製のトミカは、塗装の光沢、印刷、カシメの仕方に至るまで、中国製品に劣っているところがまったくない。

タカラトミーの人に聞くと、実際のベトナムでの製造は、いまでも苦労の連続だという。中国ではひと言いえば通じることが、手取り足取り指導しないといけない。金型から取り出したボディのバリを取るにも、中国は天津甘栗を作るように、小石と一緒にローターのなかをくるくる回して取ってしまうが、ベトナムでは、まだ人海戦術のバリ取りなのだそうだ。ただ、そうした苦労も中国で生産を始めた時も同じだったので、あと数年でキャッチアップはできるだろう。

中国ブームもそろそろ限界に近づいているのではないだろうか。

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プロフィール

獨協大学経済学部教授 森永卓郎