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森永卓郎の経済探偵録
「スタンダード」が快進撃を支える

更新日:2010年05月06日

 デフレといわれているこの景気の中、ユニクロは過去最高の業績を達成した。森永氏は、ダイエーと比較することにより、ユニクロの快進撃を分析している。
 


 
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両社の命運を分けたもの

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、4月8日に2010年2月中間期の連結決算を発表した。売上高は前年同期比31.8%増の4709億円、営業利益は43.0%増の998億円と、ともに中間期としては過去最高の業績を達成した。ファーストリテイリングは2010年8月期の通期決算についても、それまでの予想を上方修正して、売上高は前期比21.7%増の8340億円、営業利益は29.3%増の1405億円を見込んでいる。もちろん過去最高の更新だ。

一方、翌9日にダイエーが発表した2010年2月期(通期)の連結決算は、営業損益が前期の59億円の黒字から12億円の赤字に転落した。営業赤字は、連結決算の公表を開始した1984年2月期の決算以来、初めてのことだ。

両社の命運を分けたものは一体何だったのか。ダイエーは、衣料品でプライベートブランドの商品などを投入して努力したが、既存店の売り上げがデフレ不況の影響で5%減となり、経費削減が追いつかなかったという。

一方、ユニクロの快進撃は、デフレ不況を逆手にとって、比較的品質の高い商品を低価格で販売するビジネスが成功したと一般的には報じられている。だが、私は必ずしもそうではないと考えている。

決算発表の記者会見で、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、好業績の理由について、「グローバルブランドとしての認知度が国内外で高まった」ことだと語っている。この柳井社長の話の方が、ユニクロ快進撃の核心を突いていると私は思う。ユニクロのビジネスは、一つの商品を大量生産し、世界中でほぼ同じ価格で大量販売するというものだ。現にヒット商品の「ヒートテック」は、国内外で5000万着も販売された。

それだけ同じものが売られると、結局皆が同じものを着ることになる。消費者が豊かになるにしたがって、他人と違うものを持ちたいという「差別化」のニーズが高まると言われるが、なぜ多くの人たちがユニクロに殺到するのだろうか。

なぜユニクロにこだわるのか

実は、わが家はダイエーの愛用者で、ダイエーの服のほうが種類も豊富で値段も安い。ところが、私が教えているゼミの学生たちに聞くと、ユニクロには行くが、ダイエーで服は買わないと答える学生が圧倒的に多いのだ。

その理由を聞くと、「ユニかぶりは嫌だが、ユニばれは嫌ではない」と答える。「ユニかぶり」というのは、他人とまったく同じユニクロの服を着ているということだ。多様化の時代だから当然の気持ちだろう。一方、「ユニばれ」というのはユニクロを着ていることが分かってしまうことであり、このことは嫌ではないのだ。だから、一部の若者たちは「デコクロ」と言って、ユニクロの服にアップリケをつけたり、刺繍をしたりして、他人との差別化を図っている。そこまでして、若者は、なぜユニクロにこだわるのか。

それは、ユニクロが「スタンダード」になっているからだと私は考えている。ユニクロを着ているということは、普通のことだから、別に恥ずかしくはない。ところが、ダイエーで服を買うということは、普通の若者がしないから、自分に自信がないと、堂々と「ダイエーで買いました」ということが言えないのだ。

格差が拡大し、中流が崩壊するなかで、多くの人が「普通」に憧れるようになってきている。大金持ちになりたいとか、エリートになりたいとか、そうしたことではなく、あくまでも自分は「普通」でありたいと思うのだ。若者が「普通においしい」とか「普通にかっこいい」と言うときの「普通」が、普通を通り越して、高い評価を表す言葉になっているという現実がある。

そして、ユニクロこそが、グローバルに通用するスタンダード、つまり普通になったのだ。しかし、こうした時代は、特に中小企業の経営にとっては、非常に厳しい環境になることを意味している。これまでだったら、中小企業の製品でも、価格を低めに設定すれば消費者に買ってもらえたのに、これからはスタンダードという地位を獲得しないと、消費者になかなか振り向いてもらえなくなるからだ。

ユニクロが世界に羽ばたくことは、もちとん日本人として誇らしいことではあるが、日本の消費者が、商品を自分自身の目で見極めるようにならないと、多様な企業が育っていかないのではないだろうか。

プロフィール

獨協大学経済学部教授 森永卓郎