見つかる!儲かる!助かる! 経営者の味方 WizBiz(ウィズビズ)

WizBiz:HOME >  ビジネスマガジン >  ビジネスコラム >  森永卓郎の経済探偵録  >  デフレ対策に有効な期間限定値下げ  詳細

森永卓郎の経済探偵録
デフレ対策に有効な期間限定値下げ

更新日:2010年02月10日

すき家が280円という驚異的な牛丼の価格設定をしたため、ひとり勝ち状態。しかし吉野家は期間限定の値下げにとどめている。その理由は、期間限定の値下げは、高度なマーケティング技術の裏付けがある方法だからだと森永氏は読み説く。


 
 森永卓郎氏 顔写真
 
 
バックナンバー
 
日本航空の経営再建問題は日本の縮図
2010年01月13日
日本の農業ビジネスをどうするのか
2009年12月9日
日本航空の再建プログラムは正しいのか
2009年11月11日
非常に危険な足下の景気
2009年10月15日
外食産業の新しい波
2009年09月16日 
不透明さを増すアメリカ経済
2009年08月19日
新しい雇用システムをどのようにデザインするのか
2009年07月15日
こんな銀行があったっていいじゃないか
2009年06月17日
景気は底打ちしたのか
2009年05月19日
銀行の経営モデルはいかにあるべきか
2009年03月18日
アメリカはどう変わるのか
2009年02月18日
最初から解散する気などなかったのではないか
2008年12月17日
ブッシュ大統領の最大のミス
2008年11月19日
アメリカ金融危機の本質は何か
2008年10月22日
ドルは基軸通貨から転落するのか
2008年08月28日
マンション販売価格はどこまで下がる
2008年07月24日
若者の購買意欲を掘り起こす手段は
2008年06月26日
 
バックナンバー一覧
 

吉野家が期間限定の値下げにとどめたワケ

かっぱ・クリエイトが展開する「かっぱ寿司」が1月18日から29日までの平日に、通常105円の寿司一皿を90円で提供する「ウィークデイ86」キャンペーンを実施している。牛丼の吉野家も1月11日から21日まで「吉野家111 周年記念キャンペーン」と銘打って、全国の吉野家(一部店舗を除く)で「牛丼80円引き!」キャンペーンを実施した。

デフレが続くなかで、小売業界や外食業界のなかでは、無制限の値下げ競争をやめて、期間限定の値引きをする経営戦略を採る企業が徐々に増えつつある。それは、一体何故なのだろうか。

第一の理由は、値下げによる収益への影響を小さくすることだ。例えば、10%の値引きを2週間続けても、年間の単価ダウンは2.7%で済むことになる。すき家が280円という驚異的な牛丼の価格設定をし、牛丼業界で一人勝ちになっていても、吉野家はあえて期間限定の値下げにとどめた。吉野家が値下げで追随すれば、更なる値下げ競争が続き、牛丼業界は消耗戦に突入してしまう。可能性としては、どこかの企業が破綻するまで続いてしまうのだ。それはどうしても避ける必要がある。

第二の理由は、ブランドイメージの毀損を防ぐことだ。大幅な値下げは、その企業の商品が「安物」と判断されてしまう可能性がある。期間限定の値下げなら、ブランドイメージを損ねる可能性は小さい。最近流行のアウトレットモールは、正規品と販売場所を変えることでブランドイメージの低下を防いでいる。それを、時間を限定することで行なうのが期間限定値引きだ。百貨店は昔からセールをやってきたし、靴のABCマートは、店長の判断でタイムセールを行なうことによって、売り上げを伸ばしてきた。

第三の理由は、稼働率を上げることだ。売り上げが鈍る時期、閑散期をねらって期間限定の値下げを行えば、稼働率を平準化することができる。直接の値引きではないが、航空会社のマイレージ提供も同じ考え方だ。マイレージ交換で獲得できる座席数は限定されている。利用客が多い時期や時間帯の便は、マイレージ交換で取得できる座席数が非常に少ないか、まったく設定されていないケースもある。空いた座席で空気を運んでも、乗客を乗せても航空会社のコストはほとんど変わらない。だから、航空会社はどこもマイレージプログラムを採用しているのだ。

第四の理由は新規顧客の獲得だ。通常の売価のままで、新たな顧客を呼び込むことは難しい。期間限定で値下げをすれば、消費者が興味をもって試し買いをする可能性が高いのだ。

例えば、Yahoo!ショッピングは、1月13日19:00から24:00の間、Yahoo!ポイントが5倍になるタイムセールを行なった。楽天市場は1月18日10:00から1月21日9:59まで、 特定のショップ限定で通常の10倍のポイントを付与するセールを行なっている。コンビニが特定の商品に期間限定でポイントを付けるのも、新商品などを顧客に知ってもらい、新たな顧客を獲得するために行なう場合が多いのだ。

中小企業も期間限定の値下げを

もちろん、期間限定の値下げにまったく問題がないわけではない。例えば、あまりに値下げ率が大きいと、ブランドイメージも下がるし、販売数が増加しすぎて、対応のための人員投入が避けられなくなるケースもでてくる。期間が終了した後の反動も大きくなってしまう。ただ、そうした問題は、値下げ率と実施期間、実施時期を慎重に探ればよいだけの話だ。

むしろ、問題なのはこうした期間限定の値下げが、マーケティング技術の高い大企業が中心になって行なわれていることだろう。期間限定の値下げは、中小企業でも採り入れることができる。もちろん、大手と比べれば、IT化で遅れをとる中小企業では、手間がかかったり、事前の効果の予測がむずかしいということはあるだろう。しかし、小さな実験を積み重ねていけば、自ずと効果の高い実施時期や実施期間というのは分かってくるはずだ。

中小企業の場合、単純な値下げ競争では大手と対抗できない場合が多いので、期間限定の値下げをデフレ対策のひとつとして活用すべきではないだろうか。

プロフィール

獨協大学経済学部教授 森永卓郎