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格差是正へ 新政権はどう動く

更新日:2007年09月13日

安倍首相が内閣改造時の記者会見で「中央と地方に存在する格差問題に政治は配慮すべきだということが教訓だ」と述べた。しかし、来年度予算で公共事業費を3%削減する方針はすでに決定している。格差是正に民意がどのように反映されていくのだろうか。
 


 
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小泉構造改革で公共事業費が5年で10兆円削減

7月29日に投票が行なわれた第21回参議院選挙で、自民党はわずか37議席しか獲得できず、参議院の第一党を民主党に譲り渡した。とくに29の1人区で、自民党は6勝23敗と大きく負け越したことが、自民党惨敗の原因をつくったといってよい。1人区はほとんどが農村地区で、農村部で自民党への不満が一気に爆発した形だ。

もともと、農村部は自民党の強固な支持基盤だった。それは、自民党が農村部を潤す政策をとってきたからだ。1960年代まで,日本の農村は非常に貧しかった。農閑期になると一家の主人は東京や大阪などに出稼ぎ労働にでないと、生活ができなかった。しかし、田中角栄氏が「日本列島改造論」を発表して総理大臣に就任した1972年以降、公共事業の拡大によって、地方に資金が流れるようになっていく。

農村部に整備されていく社会資本とともに、工事による新たな所得獲得で、農村部の多くで、出稼ぎに出なくても家族が暮らしていけるようになったのだ。

「国土の均衡ある発展」をもたらした公共事業は、当初は都市と農村に平等をもたらす絶好の施策となった。しかし、同じことを30年も続けているうちに、ふたつの大きな問題が起こった。ひとつは、役に立たない公共事業が増えてしまったことだ。飛行機の飛ばない空港、車の走らない道路、使い道のないダム、そうしたものがどんどん作られていった。社会資本はもういらないが、工事は必要だったからだ。

もうひとつの問題は公共事業の口利きという形で、利権、癒着、腐敗の構造が与党につきまとうようになり、公共事業に対する悪いイメージが国民に定着してしまったことだ。

そこで01年に登場した小泉純一郎総理は、構造改革の名の下に、徹底的な公共事業削減を行なった。土地代を含まない国と地方の公共事業費に相当する「公的固定資本形成」は、01年度に32兆円あったのが、06年度には22兆円にまで減少した。たった5年で10兆円も減ったのだ。

民主党の意をくんで地方へ予算配慮か?

それだけではない。全国の地方自治体で最低限の行政サービスが行なえるように税収を再配分するための「地方交付税交付金等」も、総額が01年度の16兆8230億円から06年度の14兆5580億円へと2兆2650億円減少した。さらに、小泉政権が行なった補助金を減らして、代わりに税源を移譲するという補助金改革も、結局は補助金が減って困ったのは農村部で、逆に都市部は税収増加の効果が大きかったために、かえって都市と農村の格差を拡大することとなった。

小泉構造改革の地方へのマイナスの影響は大きく、農村部の商店街は軒並みシャッター通りと化し、農村経済の閉塞感は非常に強くなっていた。

それにいち早く気づいたのが民主党だった。参議院選挙では小沢党首が1人区中心の行脚を行ない、そして農村部の有権者を惹きつけたのが、「原則としてすべての販売農家に個別所得補償」を実施するという民主党の農業政策だった。総額は1兆円と、小泉構造改革で削減された地方への支出に比べれば小さいが、それでも削減一辺倒だった農村への資金がプラスになることに、農村部の有権者は心をときめかせたのだ。

もちろん、民主党が勝ったのは参議院選挙だけで、政権を奪取したわけではないのだから、民主党の公約がすぐに実現するわけではない。 しかし、安倍総理は8月27日の改造内閣発足のさいの会見で、参議院選挙惨敗の原因について「中央と地方に存在する格差問題に政治は配慮すべきだということが教訓だ」と述べて、格差是正に取り組む考えを示した。

ただ、来年度予算で公共事業費を3%削減する方針はすでに決定しており、具体的にどのような格差是正策が出てくるのかは、まだはっきりと見えない。しかし、民主党の協力を得ないと法案成立が覚束ないなか、民主党の要求をかなり取り入れる形で、地方への予算面の配慮が行なわれるのではないだろうか。その意味で、参議院選挙での民主党の圧勝は、大きな意味をもったといえるだろう。

プロフィール

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究員
獨協大学特任教授
森永卓郎