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IT活用と所得格差は本当に関係ある!?

更新日:2007年08月09日

総務省の「平成18年通信利用動向調査」で世帯年収とインターネット(パソコン)利用率の関係をみると、年収200万円未満はネット利用率が52.9%、年収400万〜600万円が74.5%、年収800万〜1000万円が83.9%となっている。IT対応と所得格差は正比例の関係にあるようにもみえるが、ネットカフェ族もITを活用しているし、一方、年収数億円クラスになるとITスキルのない人も多いのが現状である。今一度、IT対応と所得格差の関係を考えてみよう。
 


 
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年収が上がれば、ネット利用率も上がる

ITが普及すると、ITに対応できる能力が職務遂行上必須となり、IT対応能力のない労働者は求人から排除される。また、求人情報をネット上で検索するようになったり、求職情報をネットで登録するようになると、IT対応能力のない人は求職活動自体がままならなくなる。

結果的に、デジタルディバイド(情報格差)が所得格差を生み出し、それが固定化されてしまう。おそらく、ITと所得格差の関係については、そう考えるのが普通だろう。しかし、この考え方は正しいだろうか。

まず、総務省の「平成18年通信利用動向調査」で世帯年収とインターネット(パソコン)利用率の関係をみると、年収1000万円程度までは、明らかに年収とネット利用率の間に正の相関がある。たとえば、年収200万円未満はネット利用率が52.9%、年収400万〜600万円が74.5%、年収800万〜1000万円が83.9%といった具合だ。

年収とインターネットの利用率の間に高い相関があるということは、ふたつの可能性がある。ひとつはインターネットを利用できる人が高い年収を得ているということ、もうひとつは、年収が高い人ほどネットを利用できる環境をもっているということだ。

統計的な検定をしないと正確な因果関係はわからないが、前者の可能性はほとんどないと思う。まだまだ終身雇用・年功序列の部分を多く残している日本では、所得は給与水準の高い企業に就職できたかどうかで決まってしまう。インターネットが普及したのはこの10年だ。たった10年間で、IT対応能力の高い人が、こぞって給与水準の高い企業に転職したとは考えられないのだ。

年収数十億円レベルには、ITスキルのない人が多い

既述の調査結果のように、年収1000万円程度までは、明らかに年収とネット利用率の間に正の相関がある。
そこで、興味深いのは、ネット利用率をパソコン保有率で割った数字だ。年収200万円未満は2.2倍、年収400万〜600万円が1.3倍、年収800万〜1000万円が1.2倍となっている。つまり、年収200万円未満でパソコンをもてそうもない所得階層でも、パソコンを使ってインターネットをしているのだ。

この事態は、いま問題になっているネットカフェ難民を思い浮かべると容易に理解できる。彼らの多くは年収100万円台以下で、所得レベルからいえば最低クラスだが、ほとんどがネットカフェでネットを利用している。なかには、非常に高いITスキルをもっている人もいるが、それが低所得からの脱出に役立っているようすはない。

もちろん、ネットカフェ難民の多くが携帯電話に入ってくる日雇い求人情報をもとに仕事に出掛けているから、まったくITスキルのない人は、ネットカフェ難民にもなれないということなのだろう。一般的にいえば、ITスキルは低所得を脱出するときの必要条件であるが、十分条件ではない。ただし、それはあくまでも普通レベルの人の話だ。

私の知っている年収数十億円レベルの大金持ちには、ITスキルのまったくない人たちが多い。もちろん、彼らのビジネスでITが不要なわけではない。しかし、彼らは自分の会社の従業員にIT関連の作業は任せてしまっている。大金持ちが運転手を雇い、自ら自動車のハンドルを握らないのと同じだ。
だから、ITスキルは、「庶民にとっては生活するうえに必要不可欠のもの」だということになるのではないだろうか。

プロフィール

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究員
獨協大学特任教授
森永卓郎