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年金問題の結末はいつ迎えられるのか!?

更新日:2007年07月12日

いまだに実態が公表されていない年金問題。自民党は社会保険庁の改革法案と年金時効の撤廃法案を成立させ、そして今回の不明年金に対する対応策をアピールし、さらに賞与返上でけじめをつけることで、年金問題に幕引きを図りたいのかもしれない。しかし現実は、そう簡単に結末を迎えられない問題である。
 


 
 森永卓郎氏 顔写真
 
 
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賞与の自主返納が日本年金機構への採用に影響する!?

6月25日、政府は年金記録紛失問題の責任を明確にするため、安倍晋三首相と塩崎恭久官房長官、そして柳沢伯夫厚生労働相が、夏の賞与のうち首相、閣僚としての受領分を全額返納することを明らかにした。また、厚労省の辻哲夫事務次官と社会保険庁の村瀬清司長官も全額返上する、さらに、政府は社会保険庁の全職員にも50%〜5%の自主返納を求めており、社会保険庁幹部OBにも寄付を呼びかけている。

形式上は自主返納だが、塩崎官房長官は、社会保険庁を新たに発足する日本年金機構へ改組するさいに、返納の有無が採用に影響する可能性を示唆しており、返納に関して強制に近いニュアンスを社会保険庁職員は受け止めている。

政府がこれだけ厳しい姿勢で臨んでいるのは、年金の加入記録が5000万件も宙に浮いていた問題で、内閣支持率が過去最低に落ち込むほど、国民の批判が高まっているからだ。自民党は年金加入記録の批判に対応するため、3つの政策を記したパンフレットを作成して、以下の主張をしている。

(1) 今後1年間で、未確認の年金記録5000万口すべての名寄せを完了させる。政府が徹底したチェックを期限を切って実施すると同時に相談窓口を拡充して誠心誠意対応する。
(2) もし年金の「未払い」が判明した場合は、時効によって過去5年分しか受け取れなかったものを全額受給できるようにする。
(3) 過去の保険料の領収書など証明書等のない人についても、銀行通帳の出金記録、元雇用主の証言等を根拠にして第三者委員会で判断してもらうなど、積極的に年金受給権を認める。

自民党としては社会保険庁の改革法案と年金時効の撤廃法案を成立させ、そして今回の不明年金に対する対応策をアピールし、さらに賞与返上でけじめをつけることで、年金問題に幕引きを図りたいのだろう。しかし、私は今回の年金問題は相当根深く、簡単に決着が図られるとは思っていない。

転勤や出向の経験者の年金記録も宙に浮いている可能性

政府は1年以内に宙に浮いている年金加入記録データすべての名寄せを行なうというが、それは宙に浮いている5000万件の年金加入記録を本人の基礎年金番号に統合するということではない。年金の記録には、(1)生年月日、(2)性別、(3)氏名という3つの個人を特定するためのデータが含まれているが、それらが完全に一致するもの、あるいは多少違っていても、かなり近いものをコンピュータの中からデータを抽出して「あなたのものではないですか」という投げかけを1年以内に国民に対してするだけなのだ。

名寄せの作業はコンピュータの中だけで完結する作業だから、さして時間はかからない。個人属性が完全一致しているデータは、本人の申し出があれば、すぐに統合ができるはずだ。問題はデータが完全一致しない、あるいは加入記録データがみつからない場合だ。その場合は第三者委員会の判断が必要になるケースが多いだろうから、相当な時間がかかることになる。

そうしたケースがいったいどれだけあるのかが、必要な時間の長さを決めるが、社会保険庁は国会で追及されているにもかかわらず、いまだに何件あるのかという数字を公表していない。

ただし、国会で社会保険庁は民主党の長妻昭代議士の質問に対して、年齢のデータが誤っていたり、欠落している加入記録が30万件あることを明らかにしている。これに、性別や一番多いと思われる名前の入力ミスを加えたら、行方不明の加入記録は軽く百万件を超えるのではないだろうか。

しかも、厚生年金の加入記録は事業所ごとにひとつのデータとなっているため、1社にしか勤めていない人でも、転勤や出向を経験している人なら、年金記録が宙に浮いている可能性があるのだ。つまり、記録ミスが相当広範囲に及んでいる可能性が否定できないのだ。

加入記録が消失したり、入力ミスがあった場合には、年金記録を基礎年金番号に統合する作業に第三者以外などの人間の判断を入れざるを得ないから、何年もかかる大作業となってしまう。だから年金問題は、そう簡単に結末を迎えることなどできないのだ。

プロフィール

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究員
獨協大学特任教授
森永卓郎