経営者の味方「社長・経営者のための経営課題解決メディア WizBiz」

WizBiz:HOME >  ビジネスマガジン >  ビジネスコラム >  森永卓郎の経済探偵録  >  正社員雇用抑制の時代 ネットカフェ族はどこへ行く!?  詳細


正社員雇用抑制の時代 ネットカフェ族はどこへ行く!?

更新日:2007年06月14日

インターネットカフェを定宿にして、短期の仕事を繰り返すネットカフェ族。彼らを減らすには、正社員として働ける就業機会を政策的につくり出す必要があるが、時代の流れは人件費の抑制だ。ネットカフェ族はどこに向かうのだろうか。
 


 
 森永卓郎氏 顔写真
 
 
バックナンバー
 
企業に移ってどこまで戦力に!? 公務員の民間適応力を識別しよう
2007年05月17日
老後の生活資金対策は40歳代からはじめよ!
2007年04月19日
「利上げで景気回復」は幻のシナリオか
2007年03月22日
男性の非正社員化が続けば格差は一層拡大していく
2007年02月22日
ホワイトカラー・エグゼンプション導入の真相
2007年01月25日
2007年の景気はどうなるのか
2006年12月28日
団塊の世代は大市場ではなく小規模な市場を無数に生み出す
2006年11月30日
格差時代に潤う大富豪はかくして生まれた
2006年11月02日
安倍政権「再チャレンジ推進」で地方経済はどう変わる!?
2006年10月05日
原油価格高騰から生活を守る術
2006年09月07日
ゼロ金利で本当に得をするのは誰か?
2006年08月10日
村上逮捕で投資ファンド事業はどう変わるか!?
2006年07月13日
収入、貯蓄、負債からみた上流・中流・下流の分岐点
2006年06月15日
店舗飽和でコンビニの反転攻勢は難しい
2006年05月18日
格差社会をどう“豊かに”生きるのか
2006年04月20日
 
バックナンバー一覧
 
 
 
 
 

ネットカフェによっては、顧客の8割程度が「常連さん」

最近、「ネットカフェ族」という言葉が頻繁に使われるようになった。インターネットカフェを根城にして、短期の仕事を繰り返しながら生活する若者たちのことだ。ネットカフェ族が、どれくらいの人数がいるのか、どのような意識をもっているのかといった実態は明らかになっていない。ただ、彼らは明らかに「フリーター」の一部である。

厚生労働省の定義によると、フリーターは「年齢15歳から34歳の既卒者で、女性については未婚の者。さらに現在就業している者については勤め先における呼称が『アルバイト』『パート』である雇用者で、現在無業の者については家事も通学もしておらず『アルバイト』『パート』の仕事を希望する者」となっている。

2005年のフリーターの数は201万人だったから、ネットカフェ族の数はその範囲内ということになる。もちろん、ネットカフェ族の割合は非常に小さいから、おそらく数千人から数万人の規模だろう。さほど人数が多くないのに、ネットカフェ族がなぜ注目を集めているのかというと、彼らの生活スタイルが、これまでのフリーターとは明らかに異なっているからだ。

彼らはネットカフェに生活基盤を置いている。最近のネットカフェは、たんにマンガが置いてあって、インターネットが使い放題というだけではない。自分のスペースが個室に近い形で仕切られていて、シャワーも完備されているから、そこで暮らすことが十分可能なのだ。普段はネットサーフィンをしたり、マンガを読んでいて、仕事があるというメールが届くと、働きにでる。ネットカフェによっては、顧客の8割程度がそうした「常連さん」で占められているそうだ。

ネットカフェ族が、ネットカフェで暮らすようになるきっかけは、何らかの理由で自宅や自分が借りていたアパートから出ざるを得なくなったことだ。一度住む場所を失ってしまうと、都会で新たにアパートを借りるためには、敷金、礼金などで少なくとも20万円くらいのお金が必要になる。普段暮らしていくお金は稼げても、そうしたまとまったお金は用意できない。それがネットカフェで暮らし続ける理由なのだ。

就職後の明るい未来をイメージできる政策が必要

彼らは、一見新しい存在であるようにみえるが、じつは簡易宿泊所で寝泊まりし、建設現場で働く日雇い労働者と、ライフスタイル面ではほとんど変わらない。だから、ネットカフェ族を救おうと思ったら、日雇い労働者が減少していったのと同じ環境をつくってやればよい。つまり彼らにまともな正社員の仕事が与えられる世の中にすることだ。しかし、いまの政府は人件費削減という企業の「構造改革」を支持しているから、正社員を増やすような政策は採らないだろう。

そうなると、ネットカフェ族に対する施策はおのずと限られてくる。彼らはフリーターの一部なのだから、フリーター対策として行なわれていることを充実させるしかないのだ。具体的には、公的助成で彼らに教育訓練の機会を与え、企業にお試し雇用の機会をつくってもらうということだ。そしてネットカフェ難民が「定住」できるように、住宅を借りるときの敷金・礼金負担を融資する仕組みをつくればよい。

しかし、フリーター対策がなかなかうまく行かないように、そうした政策がすぐに機能するとは限らない。なぜなら、彼らには就職したあとの明るい未来をイメージできていないからだ。やはり、きちんと景気を戻して、まもとな就業機会をつくることがすべての前提になるのだと思う。

プロフィール

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究員
獨協大学特任教授
森永卓郎