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男性の非正社員化が続けば格差は一層拡大していく

更新日:2007年02月22日

いまや格差の主役は女性から男性に移りつつあるが、それは男性の非正社員化が進んでいるからだ。「相対的貧困率」において先進国のなかではアメリカについで2番目に高い国にランクされた日本。格差是正が問題提起されているが、格差は是正される見通しにあるのだろうか。それとも、ますます拡大していくのだろうか。
 


 
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日本の所得構成は世界で2番目に不平等

昨年1月19日に開かれた月例経済報告に関する関係閣僚会議に内閣府が、「経済格差の拡大は統計データからは確認できない」とする資料を提出した。もともと所得格差の大きい高齢者世帯や、所得の少ない単身世帯の増加が、見かけ上の格差を広げているだけだというのがおもな内容だった。この資料に基づいて小泉総理(当時)が「統計から格差拡大は確認できない」という発言をしたため、国会では野党だけでなく、与党からも格差拡大への批判が繰り広げられて、かえって格差論争に火をつける結果となった。

そして昨年2月1日の参議院予算委員会で、小泉前総理は「私は格差が出ることは悪いこととは思っていない。ようやくいま、景気回復で光が見えてきた。光が見え出すと影のことをいう人がいる。影に対しどうやって手当てをしていくかが大事だ」と述べて、格差拡大を容認する姿勢を明確にした。

小泉前総理が格差拡大を認めて以降、「格差は拡大していない」という主張は一気に勢いを失った。それは各種の統計をみれば、格差拡大は明らかだったからでもある。たとえば、昨年7月にOECD(経済協力開発機構)が明らかにした相対的貧困率の2000年時点のランキングで、日本は相対的貧困率が13.5%とアメリカの13.7%に次いで先進国のなかで2番目に高かった。

相対的貧困というのは、国民を所得の順番に並べて、真ん中の順位の人の半分以下しか所得のない人を指す。その比率が先進国で2番目に高いということは、ある意味で日本は世界で2番目に不平等ということになる。

学用品や給食費などの就学援助を受ける児童・生徒は1995年度の76万6173人から年々増加し、2004年度には133万6827人となっている。金融広報中央委員会の調査では、貯蓄がゼロの世帯は95年の7.9%から06年には22.9%に達している。国民健康保険の長期滞納を理由に、資格証明書を交付され、保険証を使えない無保険者は04年度に30万世帯と、4年間で3倍に増えた。

雇用形態内ではなく雇用形態間での格差拡大

こうしたデータを並べてみれば、格差拡大は明らかなのだが、なぜ格差拡大が起きていないという議論がなされたのかといえば、今回の格差拡大は雇用形態内で起こっているのではなく、雇用形態間で起こっているからだ。

たとえば、正社員という雇用形態のなかでは、若年層を除けば格差が拡大しているわけではない。格差拡大の主因は、年収が500万円程度の正社員から年収が100万円程度の非正社員に雇用の重心が移りはじめていることなのだ。リストラされたり、会社がつぶれたり、あるいは出産・子育てのために一度正社員の職を失うと、なかなか正社員に復帰することができない。その結果、非正社員の低所得層が増えていく。それがここまで続いてきた格差拡大の正体だ。

それは数字にも現われている。「労働力調査」でみると、今回の景気拡大がはじまった02年1〜3月期の非正社員比率は28.7%だったが、04年1〜3月期には31.5%に急上昇した。しかし、2004年以降は明確な変化が現われている。

男女合わせた非正社員の割合は、04年1〜3月期の31.5%から06年7〜9月期の33.4%へと「順調」に上昇しているのだが、女性だけで見ると52.6%から52.9%とほとんど上昇していないのだ。当然、男性は同じ期間に16.0%から18.5%へと急増している。最近の格差拡大の主役は男性になっているのだ。

なぜそうなのか。じつは非正社員の活用が進んだのは、もともと女性だった。人件費節約のために、女性のパートタイマーや派遣社員を積極活用するというのが、企業のトレンドになってきたのだ。ところが、女性の非正社員比率が5割を超えて、限界が見えてきた。いくらなんでも、正社員が管理できる非正社員の数にはおのずと限度がある。

それに対して、男性についてはこれまであまり非正社員の活用が進んでいなかったために、まだ非正社員の比率を上げる余地があるということなのだろう。したがって、今後、格差が一層拡大するかどうかは、男性の非正社員化がどれだけ続くかにかかっている。

トヨタ自動車が07年度に期間従業員の正社員への登用枠を前年の900人から1200人へと大幅に拡大するという明るいニュースもある。しかし、日本最強の経営体力をもつトヨタの動向は、必ずしも全国の動きを代表しない。やはり、景気が本格回復しないと、格差拡大は続くのではないだろうか。

プロフィール

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究員
獨協大学特任教授
森永卓郎