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2007年の景気はどうなるのか

更新日:2006年12月28日

景気拡大期間でいざなぎ景気を抜くなど景気が順調に回復しているなかで、異変が起きている。3月の量的金融緩和、7月のゼロ金利解除。この2つが株価下落を招き、経済を縮小させつつあるのだ。2007年、景気はどう推移するのだろうか。森永氏が見通す!
 


 
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金融引き締めが株価下落を招いた

11月の『月例経済報告』が景況判断を「回復」としたため、景気拡大期間が連続58カ月となり、拡大期間が戦後最長だったいざなぎ景気を抜いた。景気の足腰は強いと、明るい気分が広がったのだが、どうやらそれはヌカ喜びだったようだ。

12月8日、内閣府がGDP統計の2次速報を発表した。これによると、06年7〜9月期の実質GDPは年率換算で0.8%成長となり、11月14日に発表された1次速報の同2.0%成長から大幅に下方修正された。しかも、名目GDPは年率-0.0%減と、わずかだが、マイナス成長に陥ってしまったのだ。順調に回復しているといわれた日本経済に何が起こったのだろうか。

じつは、株式市場でも同様のことが起きている。日経平均株価は4月7日に1万7563円の高値をつけたが、その後下落に転じる。企業収益が低迷したからではない。東証1部上場企業は9月の中間決算で、前年同期比12.8%も利益を増やしている。

株価の下落は、3月7日の量的金融緩和解除の実施以降、7月14日のゼロ金利解除へ向けて日銀が資金供給を絞っていったのと呼応しているのだ。簡単にいうと、日銀の金融引き締めが、株価下落を招き、経済を縮小させたということなのだ。これは私だけの認識ではない。

自民党の中川幹事長は12月9日に、自身のホームページに次のように書いた。
「1次速報が7月と8月の統計だけだったのに対して、今回の2次速報は9月の統計が入っている。つまり、1次速報と2次速報の差は、この秋の「潮目」の変化を表わしている」。「7〜8月の統計と7〜9月の統計の差の原因は何か。この間に影響を与えた政策転換といえば、私には日銀による3月の量的緩和解除と7月のゼロ金利解除しか思い浮かばない。日銀は12月の政策決定会合前に、是非、3月と7月の金融政策が実態経済に与えた影響について検証を行ない、国民や次回の経済財政諮問会議に報告していただきたい」

中川幹事長は、3月の量的緩和解除と7月のゼロ金利解除が失敗であったことを示唆するとともに、日銀の再利上げを強くけん制した。ところが、日銀は反省するどころか、まだ再利上げの構えを崩していない。たとえば福井総裁は、相次ぐ厳しい経済指標の発表にも「経済拡大のメカニズムに修正を迫るものではない」と切り捨て、再利上げは「いかなる時期も排除しない」としているのだ。

もし、日銀が再利上げに踏み切ったらどうなるのか。私は2000年8月のゼロ金利解除の二の舞になると思う。デフレ脱却どころか、深刻なデフレに逆戻りしてしまうのだ。

定率減税の撤廃は消費拡大にブレーキ

ただ、私は期待も込めて、日銀が再利上げに踏み切ることはないと思う。日銀の福井俊彦総裁の任期は08年3月までだ。後任の任命権は安倍総理にある。もし、日銀が再利上げという「暴走」をしたなら、安倍総理は日銀が嫌がる総裁を送り込むだろう。それが嫌で、日銀は金利引き上げをできないはずだ。

日銀が金融引き締めに転じたのが06年4月からだから、07年4月にはその効果が一巡し、マネタリーベースの前年同月比のマイナス幅は、その後徐々に縮小していく。金融が緩和されていくのだから、4月以降、株価は上昇していくだろう。

金融緩和は、通常なら円安要因となるが、為替が大きく円安に振れることはないだろう。最近生じている為替の変動は、円高というよりも、ドル安だ。巨額の経常収支赤字を抱えるアメリカ経済の信頼が揺らいでいることが、ドル安の原因となっている。そのことが、日本の金融緩和と「弱さの綱引き」となって、為替の面では、さほど大きな変動は起こらないと思われる。

そうしたなか、経済は成長を続けるが、成長率は2%程度の低いものになるだろう。その原因は、消費の低迷だ。「家計調査」でみると、06年10月まで10カ月連続で消費は前年同月を下回っている。これまで消費者は、可処分所得が減少するなかでも、貯蓄を押さえ込むことで消費を拡大してきた。しかし、4世帯に1世帯が貯蓄ゼロになるなかで、貯蓄の圧縮は限界にきている。そのなかで、07年は定率減税の撤廃が行なわれる。消費が大きく拡大することはないだろう。

したがって07年は、減速しながらも、ゆるやかに経済が拡大する年になるのではないだろうか。もちろん、それは経済全体の話で、格差の拡大は続いていく。大企業が中小企業への発注単価を切り下げ、人件費を抑制していくという傾向は変わっていないからだ。

プロフィール

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究員
獨協大学特任教授
森永卓郎