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格差時代に潤う大富豪はかくして生まれた

更新日:2006年11月02日

このたびの景気回復期に雇用者報酬は4兆円減っている。庶民が景気回復を実感できない現実は、数字にも現われているのだ。しかし一方で、大富豪が数億円のマンションや数千万円のクルーザーを購入したりと、消費を謳歌している。この時期、大富豪はいかにして生まれたのだろうか。
 


 
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高額納税者6000人の約半数が企業家と医師

いまの景気の拡大期間が57カ月に及び、1965年から70年まで続いた高度成長期の「いざなぎ景気」に並んだ。しかし、庶民に景気回復の実感はない。それは当然のことだ。今回の景気回復期に名目GDPは21兆円増えた。しかし、サラリーマンに支払われた報酬の総額である「雇用者報酬」は4兆円減っている。

つまり、サラリーマンは経済成長の分配を一切受けていない。それどころか、むしろ分け前を減らしているのだ。さらに、この期間に庶民は3兆9000億円の所得課税の増税も受けている。そんな泣きっ面に蜂の扱いを受けて、景気回復の実感などあるはずがない。

しかし、庶民の生活が苦しいなかで、都心の数億円のマンションが即刻完売になったり、60万円のスーツ、数千万円のクルーザー、百万円を超すフェラーリの自転車、高級ブランドのバッグなどが飛ぶように売れている。ミニバブルとも呼ばれる現在の高級品ブームは、その背後に高額所得層が生まれていることを示唆している。しかし、彼らがいったいどのような人なのか、その属性はあまり明らかになっていない。

日本で唯一といってもよいお金持ちの実態に迫る調査は、京都大学の橘木俊詔教授が行なった『日本のお金持ち研究』(日本経済新聞社2005年03月)だろう。この研究では、3000万円以上の高額納税者で、前年も高額納税者名簿に名前が載っていている約6000人を対象に独自のアンケート調査を行なっている。回収率は約1割に過ぎなかったが、そこには驚くべき属性が現われていた。

一般に、お金持ちのイメージは、芸能人やスポーツ選手といった華やかな職業だが、実際のお金持ちの32%が企業家、15%が医師で、このふたつの職業だけで半数近くを占めていた。次いで企業の経営幹部が12%、芸能人とスポーツ選手は1%ずつ、弁護士はわずか0.4%に過ぎなかった。

自分が働いて稼ぐのではなく、お金に働かせて稼ぐ

この結果をみると、富豪への道は、まず大企業に入社して、偉くなることのように思えるが、そうではない。東京都の企業経営者・幹部の高額納税者のうち、上場企業の人の割合は2割に過ぎず、しかも17年前の3割から大幅に減っている。つまり、お金持ちになるには、上場企業で出世するのではなく、自分で起業するか、親の企業を受け継ぐしかないのだ。

一方、医者は、これまでは開業医になればかなり安定して稼ぐことができたが、診療報酬の抑制で、いまではそれもかなり危うくなり、親が開業医でない場合は、開業してもローンの負担に追われてしまうケースも多い。結局、お金持ちになれるのは親からの遺産を受け継いだ者と事業に成功した者ということになりそうだ。

しかし、私はそれがいまのお金持ちの主流であるとは考えていない。「全国消費実態調査」で1999年から2004年にかけての年間収入の分布がどのように変化したのかをみると、年収900万円台以上の層の構成比は軒並み減少し、逆に年収800万円台以下の層の構成比が軒並み増えている。この調査はサラリーマンだけでなく、自営業を含めたすべての国民を対象にしている。そのなかで、金持ちが減って、お金のない層が増えるという「地すべり現象」がみられるのだ。これは一体何を意味するのか。

私は、こうした公的調査に答えない、あるいは答えたくない層こそが、いまの富豪を形成しているのだと思う。つまり、大金持ちは、働いて稼いだ人ではなく、お金に働かせて稼いだ人なのだ。日本ではそういう人は非常に稀だったが、欧米では「金持ちが働かない」というのは常識だ。日本もその「グローバルスタンダード」に近づいたのだ。

富豪がめざすのは、孫の世代まで継続する階級社会の形成か

1997年の金融危機以降、日本ではハゲタカビジネスが大いに盛り上がった。不良債権処理に絡んで二束三文で株式や不動産、あるいは企業を買い取り、高値で売り抜ける。あるいは、一見、成長性豊かな事業を立ち上げて、新規株式公開を行ない、多額の株式公開益を懐に入れる。いま富豪になっている人たちは、そうした人が圧倒的に多いのだ。

彼らと話していると彼らの思考には一定の特徴がある。第一に、お金は使うものではなく、増やすものだと考えていることだ。たとえば自分が住むための家はなるべく買わない。彼らは貸して収益をあげるために買うのだ。もうひとつは、いかに税金を節約するのかを考えていることだ。だから資金を海外に逃避させ、法律スレスレの節税策を講じる。

だから、彼らと話していると、話題は金儲けの話と節税の話ばかりで、文化を論じることはほとんどない。つまり教養がないのだ。だから、消費に関しては、成金的な使い方しかできないのだ。アメリカではビル・ゲイツやジョージ・ソロスが慈善事業に軸足を移しているのと大違いで、彼らは資産を増やすことに夢中なのだ。

しかし、不良債権処理が一段落し、そしてIT株バブルも崩壊したため、日本では、今後いままでのようなペースで成金の富豪が生まれることはないのではなかろうか。富豪になった彼らが今後めざすのは、いまの階級が子供の世代、孫の世代まで継続するような階級社会を作ることではないかと私は考えている。

プロフィール

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究員
獨協大学特任教授
森永卓郎