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森永卓郎の経済探偵録
サブプライムショックでM&A頻発!?

更新日:2008年02月07日

サブプライムショックがどこまで広がるのか。政府の対応が焦点になっているが、森永氏は、サブプライムローンの損失額が91年に貯蓄貸付組合(S&L)問題に比べて小さいことから、春以降に落ち着きを示すのではないかと見通す。ただし日本では、他国とは異なる状況になる可能性があるとも――。
 


 
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サブプライムローンのGDP比率は0.9%

アメリカの金融機関がサブプライムローン関連で、昨年10〜12月期の決算に巨額の損失を計上した。シティグループはサブプライム関連で222億ドル(約2兆4000億円)の損失を出し、全体でも98億3000万ドル(1兆500億円)の大幅赤字決算となり、シティグループ発足以来の赤字に転落した。また、メリルリンチは、サブプライムローン関連の損失が141億ドル(約1兆5000億円)で、最終損益もシティグループと同額の98億3000万ドルの大幅赤字となった。さらに、バンク・オブ・アメリカはサブプライムローン関連の損失が52億8000万ドル(約5600億円)発生し、最終利益も前年同期比95%減の2億6800万ドルに激減した。

自己資本不足に陥った大手金融機関は、資本増強に向かわざるを得ず、シティグループはシンガポール政府投資公社やクウェート投資庁、サウジアラビアのアルワリード王子などからの資本提供を受けている。メリルリンチも、シンガポール政府投資後者や韓国投資公社、さらにはみずほコーポレート銀行などからの出資を受けている。

このように金融機関のこうむる痛みが拡大するなかで、金融不安が高まり、それが世界同時株安に結びついてしまった。ただ、問題は今後サブプライムショックがどこまで広がるのかということだ。評論家のなかには、サブプライムローンを組み込んだ証券の支払い保証をしていたモノライン保険の経営問題にも発展して、数百兆円の損失が発生するという恐ろしい話をする人たちもいる。

しかし、私は、そんなことにはならずに4月頃には金融不安は収まるだろうと考えている。第一の理由は、サブプライムローンの損失が、マクロでみれば、さほど大きなものにはならないと考えられるからだ。

アメリカの住宅投資がGDPに占める割合は4.5%だ。その住宅投資がすべてローンによってまかなわれていたとしても、住宅ローンのうち銀行が融資するプライムローンが8割を占めていて、サブプライムローンは2割しかない。そうすると、サブプライムローンがGDPに占める割合は4.5%×0.2=0.9%となる。

サブプライムローンの残高が急速に増えたのは、この3年間くらいだから、それが全部こげついたとしても0.9%×3=2.7%というのがサブプライムローンのこげつきのGDP比だ。しかも、アメリカでは、返済が滞ると、すぐに裁判所が処分命令を出して住民を追い出し、担保になっている住宅をオークションにかけてしまう。

貯蓄貸付組合(S&L)問題に比べて損失は小さい

現在、買値の半額程度で落札されているから、その分は債権者が取り戻せる。つまり、2.7%×0.5=1.35%というのが、サブプライムローン問題による損失の大枠なのだ。アメリカのGDPは1500兆円程度だから、20兆円程度の話だ。

2002年に、日本の不良債権問題が深刻化したときの不良債権による損失はGDPの5%だった。1991年にアメリカの貯蓄貸付組合(S&L)が大規模なこげつきを出したときの損失がGDPの3%だった。それらの危機と比べると、サブプライムローンによる損失は圧倒的に小さいというのが現実なのだ。

ただ、危機を叫ぶ人は、今後アメリカの不動産価格が大幅に下落し、サブプライムローンだけでなく、プライムローンにも大規模なこげつきが出るのだという主張をする。しかし、私はその可能性も小さいと考えている。なぜなら、サブプライムローンの借り手は、銀行が融資するプライムローンを借りることのできない低所得者であり、その大部分が黒人、ヒスパニック、東洋人といった有色人種だからだ。

彼らが、上手く乗せられて、あるいはだまされて、無理なローンを組んで家を買い、そしていま自宅から追い出されているのだ。そして、彼らが追い出された家を、オークションを通じて安値で買っている資産家の大部分は白人だ。オークションで買った家を追い出された人たちに賃貸して、家賃収入を稼ぐのだ。つまり、サブプライムローン問題で、白人は痛んでいない。痛んでいないのだから、彼らの住む地域の不動産価格が暴落するという可能性は小さいのだ。

むしろ考えなければならないのは、証券化というサブプライムローンのもつもうひとつの特徴だ。サブプライムローンを融資した住宅ローン会社は、融資を証券化し売却してしまう。だから融資がいくらこげついたとしても、住宅ローン会社に損失はでない。損失を被るのは、その証券を保有している金融機関を含む投資家たちだ。

日本の場合、融資をしたら銀行が債権を持ち続ける。だから銀行は損失を表面化させないように、融資先が経営不振に陥っても追い貸しを続けた。それが、不良債権問題を長期化させる大きな原因になったのだが、サブプライムローンの場合はそうしたことが起こらないのだ。しかもサブプライムローンの債権は、自動車ローンやクレジットカードローン、一般融資など、別の債権と組み合わされてCDO(債務担保証券)として売却されている。

割安になった日本企業へのM&Aが頻発する可能性

CDOはサブプライムローン以外の債権も含んでいるのだから、無価値にはならない。また、そうした仕組みになっているから、CDOの証券価格が下げ止まれば、その時点でぴたっと損失は生じなくなるのだ。

今年4月に明らかになる1〜3月期決算では、サブプライムローン関連の損失は激減するだろうと私はみている。だから、春以降、世界の金融市場も落ち着きを取り戻してくるだろう。問題は、日本だ。サブプライムローンショックを受けて、アメリカのダウ平均株価は昨年末から1月24日までに6.6%下落したのに対して、日本の日経平均株価は14.5%と2倍以上も下落しているからだ。

金融不安の広がりに対してブッシュ大統領は16兆円規模の減税を打ちだしたほか、FRBもFF金利を0.75%引き下げるという思い切った金融緩和に踏み切った。しかし、日本政府は財政出動を否定し、日銀は金融緩和に踏み切らない。この無策が日本の株安を生んでいるのだ。その結果、起こる事態は、今年後半以降、割安になった日本の株価の下で、外資による日本企業のM&Aが頻発するということだろう。外資による買収攻勢で日本の株価は上がりはじめる。しかし、そのオーナーは、外国人に代わっていくのだ。

プロフィール

三菱UFJリサーチ&コンサルティング客員研究員/獨協大学経済学部教授 森永卓郎