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村上逮捕で投資ファンド事業はどう変わるか!?

更新日:2006年07月13日

村上ファンド事件によって、投資ファンド全体がなにやら怪しい存在として国民に認識されてしまったかのようだが、投資ファンドには3つの種類がある。さらに村上ファンドのような手法が通用しない経済環境が形成されつつある。投資ファンド事業の行方はどうなるのだろうか。
 


 
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投資ファンドには3種類がある

村上世彰元代表が逮捕されて以降、村上ファンドが残高急減の危機に瀕しているという。日銀の福井総裁に続けというわけではないのだろうが、通称とはいえファンドに名前を冠していた代表者が、インサイダー取引容疑で逮捕されたのだから、信用を重んじる機関投資家が資金を引き揚げようとするのは、当然のことだろう。

しかし、村上元代表が逮捕された影響はそれだけではすまない。投資ファンド全体がなにやら怪しい存在として国民に認識されるようになってしまったからだ。

投資ファンドには3つの種類がある。第一は、企業再生型ファンドで、経営の立ち行かなくなった企業を買収し、思い切った人員整理や新事業の立ち上げなど、事業の再構築を行なって、黒字が定着したら、売却して利益を得るというものだ。

第二は、ヘッジファンドと呼ばれるもので、金融工学を駆使して利益を得ることを目的とする。昨年2月にライブドアがニッポン放送株を大量取得したときに、リーマンブラザーズ証券は、ライブドアが発行した「転換価格下方修正条項付新株予約権付転換社債」を引き受ける形で800億円の資金供給を行なった。

この資金提供によって、リーマンブラザーズは多額の利益を稼ぎ出したが、そうしたやり方が、ヘッジファンドの典型的な手口だ。第三は長期投資型で、将来性のある企業の株式を分散保有し、利回りの追求とリスク低減の両立を図ろうとするものだ。

村上ファンドは、これらのいずれでもない。村上ファンドは、保有資産額に比べて株価が割安になっている企業の株式を買占め、経営権取得をちらつかせながら、高額の配当を引き出したり、買い占めた株式を高額で引き取らせることで、短期間に巨額の利益を得ることを目的にしている。日本でいえば仕手筋、アメリカ流にいえばグリーンメーラーというのが、村上ファンドのビジネスモデルに近いものだ。

村上ファンド的手法が通用しない経済環境になった

ただ、村上ファンド的な手法が成功することは、一般的にはむずかしい。なぜなら、村上ファンドは、純資産額を下回るような時価総額の企業が買収対象として存在することが、すべての前提になっているからだ。もし、純資産以上の時価総額になっていれば、株式を買い占めても高額の配当を引き出すことなどできないし、転売先もみつからないのだ。

村上ファンドが発足した1999年はデフレが非常に厳しい時期であり、株価が割安に放置された企業がたくさんあった。デフレのときには、将来株価が値下がりすると皆が思うから、その値下がり分を織り込んで株価形成が行なわれる。だから、本来よりもずっと安い株価がつくのだ。

ところが、2003年4月を底に、日経平均株価は上昇に転じていった。その結果、村上ファンドが買い占めの対象とする割安株はどんどん減っていった。しかも、村上ファンドの資産規模が膨らんでいく過程で、大量の資金運用が必要となり、まずます投資対象が狭まっていったのだ。そうした厳しい環境のなかで、追い詰められた村上ファンドが、一か八かの大勝負に出たのがニッポン放送株の買い占めだったのだろう。

しかし、利益を優先するあまり、村上被告は禁断のインサイダー情報に手をつけてしまった。そうしなければならないほど、村上ファンドは追い詰められていたのだろう。今後は同じような事件が起きる可能性は小さくなった。

第一の理由は、株価の回復で、そもそも割安株が少なくなったこと。第二は、ニッポン放送事件をきっかけに、買収防衛策を取る企業が増えたこと。第三は証券取引法をはじめとする関連法規が改正されたことで、敵対的な買収が難しくなったこと。第四は、ライブドア事件以降、新興企業の株価が下落したため、村上ファンドが利用した新興企業の企業買収資金が大きく減少したことだ。

つまり村上ファンドは、日本経済がデフレ下にあり、しかも関連法規や企業の買収防衛策が未整備で、協調する新興企業が豊富な買収資金をもっているという状況下で、一時的に存在することができた一種のあだ花だったのではないだろうか。ライブドアや村上ファンドの事件を経験して、日本の資本主義は成熟化した。だから、今後の投資ファンドは、企業の中長期的成長を資金面で支援するという本来の姿に戻っていくのではないだろうか。

プロフィール

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究員
獨協大学特任教授
森永卓郎