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収入、貯蓄、負債からみた上流・中流・下流の分岐点

更新日:2006年06月15日

勝ち組・負け組み、あるいは上流・中流・下流など格差を表わす言葉が流行語のように使われている。実際に格差は開いていが、そもそも何をもって格差を定義すればよいのだろうか。森永氏が収入、貯蓄、負債の各統計から分析した。
 


 
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年収566万円が中流のなかの中流

勝ち組・負け組、上流・中流・下流など、最近は格差を表わす言葉がしばしば使われる。実際、格差が拡大しているのだから仕方がないのだが、それではどの程度の収入や資産だったら「上流」といえるのかは、いまひとつはっきりしない。そこで統計をもとに、収入や資産の分布をみよう。

まず、総務省「家計調査」(2004年版)で、年間収入の10分位階級別の年間収入をみよう。年間収入10分位というのは、調査対象世帯を年間収入の低いほうから順番に並べ、一番低い10%のグループを第T分位、次の10%を第U分位として、もっとも収入の高い10%を第]分位と呼ぶ階級分類のやり方だ。2004年版の「家計調査」では、第T分位は年収295万円までの世帯が該当し、その平均年収は235万円となっている。一方、第U分位は年収が295万円から359万円までが該当し、平均年収は327万円だ。

年間収入で下位10%が、ちょうど年収300万円以下というのは興味深い。やはり年収300万円を切るというのが、下流ということになるのだろう。その反対側の第]分位をみると、年間収入の多い上位10%は、年収1100万円以上の世帯が該当している。平均年収は1434万円だ

一方、それでは中流というのは、どこだろうか。この場合平均値の648万円というのは実感と合わない。一部の金持ちが、平均を嵩上げしているからだ。むしろ、順位がちょうど真ん中の人、第X分位と第Y分位の境目、中位数の566万円というのが中流のなかの中流ということになるだろう。ちなみに、第X分位と第Y分位のレンジは、491万円から650万円となっている。中流に属するのはこの範囲というのが、もっとらしいだろう。

1000万円以上の金融資産をもつ世帯が38.9%

それでは、資産のほうはどうだろうか。家計調査では、資産の額がわからないので、5年に一度行なわれている総務省「全国消費実態調査」の平成16年版速報で、資産の分布をみよう。

貯蓄から負債を引いた金融資産額は、平均値が950万円、中位数は605万円となっている。ただ、収入に比べて金融資産の格差は大きい。たとえば2000万円以上の金融資産をもつ世帯は22.1%、1500万円〜2000万円が6.7%、1000万円〜1500万円の世帯が10.1%と、負債を差し引いた後のネットで1000万円以上の金融資産をもつ世帯が、38.9%も存在するのだ。

その一方で、金融資産がマイナス、すなわち貯蓄現在高よりも負債現在高のほうが多い世帯が、全体の25.4%を占めている。金融広報中央委員会の調査でも、貯蓄をまったくもたない世帯の比率が、昨年23.8%となったが、それを裏付けるような結果だ。なお、金融資産が1000万円以上のマイナスという世帯が13.0%存在し、2000万円以上の金融資産をもつ世帯が22.1%存在することから、金融資産面での下流は1000万円以上の債務超過、上流は3000万円以上の金融資産、そして中流は中位数の金融資産600万円というところになりそうだ。

非常に興味深いのは、年収と貯蓄額は比例しないということだ。年間収入10分位階級別にみると、金融資産額は第T分位の706万円からはじまって、第U分位962万円、第V分位1054万円と最初は年収とともに増えて行くが、第W分位以降は金融資産額が低下する。第W分位が835万円、以降、第X分位801万円、第Y分位639万円だ。第Z分位以降はふたたび増えはじめ、第Z分位679万円、第[分位789万円、第\分位1177万円、第]分位1861万円となっている。

先に貯金して残りの金で生活すれば貯まりやすい

年間収入と金融資産が比例しない一番の原因は、金融資産を多くもっているけれど現在の収入のあまりない「高齢者」が統計に含まれているからだろう。

ただ、現役世代の同年収の世帯間でも、貯蓄格差は相当存在する。それは貯金を先にするか、後にするかの差だと思われる。1カ月の生活を終えて、余ったお金を貯金する世帯はお金が貯まらない。先に天引きで貯金を確保して、残りのお金で生活する世帯はお金が貯まっていく。お金がなければないで、なんとか生活は工夫できるからだ。

なお、都道府県別の1世帯当たり金融資産をみると、沖縄県がもっとも少なく、マイナス8万円と債務超過になっている。一方、金融資産額の一番多いのは福井県の1401万円、次いで三重1384万円、高知1254万円、愛知1209万円、徳島1207万円、岐阜1205万円の順となっている。ここからみても、所得の高い県の世帯が、金融資産を多くもっているわけではない。やはり、貯蓄を重んじる風土のある地域が、お金を貯めているのだ。

プロフィール

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究員
獨協大学特任教授
森永卓郎