経営者の味方「0円ビジネスマッチング WizBiz(ウィズビズ)」

WizBiz:HOME >  ビジネスマガジン >  ビジネスコラム >  森永卓郎の経済探偵録  >  店舗飽和でコンビニの反転攻勢は難しい  詳細


店舗飽和でコンビニの反転攻勢は難しい

更新日:2006年05月18日

主要コンビニエンスストアの既存店売上高が過去最長の20カ月連続の前年割れを記録した。取り扱い分野の拡大や「ナチュラルローソン」のように顧客層の絞り込みなど差別化を模索するコンビニ各社だが、店舗飽和から抜け出す突破口はまだ見出せていないようだ。森永氏はどう見通しているのだろうか。
 


 
 森永卓郎氏 顔写真
 
 
バックナンバー
 
格差社会をどう“豊かに”生きるのか
2006年04月20日
中小企業が景気回復を実感できない理由
2006年03月23日
ライブドア事件から学ぶ4つの投資基準
2006年02月23日
耐震強度偽装事件でマンション市況はどうなる!?
2006年01月26日
景気回復でも年収300万円時代が続く理由
2006年01月05日
TBSが楽天にゆったりと対応した理由
2005年12月01日
プロ野球球団の上場は是か非か
2005年11月02日
郵政民営化で誕生するニュービジネスを試算!
2005年10月06日
郵政民営化で本当に得するのは誰か!?
2005年09月08日
猛暑で儲かるビジネス、じつは……
2005年08月11日
クールビズの経済効果を実証する!
2005年07月14日
消費者心理が先か、景気が先か
2005年06月16日
3つの理由から外食市場は横ばいで推移
2005年04月28日
ニッポン放送株争奪戦の本質を突く!
2005年03月31日
どこへ向かう!? 団塊の世代の退職金
2005年03月03日
IT長者ブームはいつまで続くのか
2005年02月03日
新興証券市場は正しく機能するのか
2005年01月06日
法令遵守が健全に機能する条件
2004年12月02日
メディアを鵜呑みにしないニュースの読み方
2004年11月04日
 
バックナンバー一覧
 
 
 
 
 

既存店売上高が過去最長の20カ月連続の前年割れ

4月20日に日本フランチャイズチェーン協会が、3月の主要コンビニエンスストアの統計を発表した。既存店売上高は、前年同月比2.5%減の5551億円となり、20カ月連続の前年割れだった。20カ月連続の前年割れは過去最長となる新記録だ。2005年度の全国百貨店の売上高は前年比0.7%増の7兆8509億円となっており、景気回復のなかで百貨店の売上高は9年ぶりに前年実績を上回っている。流通業界でコンビニが独り勝ちだった時代は完全に終わったとえる。

もちろん、コンビニ市場が縮小しているわけではなく、新規店を含む全店売上高は前年同月比0.8%増の6062億円となっている。3月の店舗数が前年比2.5%増えた結果だ。ただ、既存店の売り上げが減っているということは、コンビニ経営が苦しくなっていることを意味している。

店舗数が全国で4万店を超える段階に突入したことで、コンビニは店舗飽和による過当競争に入ったといえるだろう。当然、コンビニは、こうした競争激化に対して、手をこまねいていたわけではない。

オリジナル商品とオリジナル景品で差別化

第1の対策は、消費者が購入しやすくする工夫を行なったことだ。コンビニ開業当初から蛍光灯の照度を上げて、明るい店作りで集客に努めるということは行なわれていた。最近ではそれに加えて、冷蔵庫の扉をなくす戦略が主流になっている。扉を開ける手間がない分だけ、商品をカゴに入れやすくなるのだ。ただ、こうした戦略はおのずと限度がある。迷っている消費者の背中を押す程度の効果しか期待できないからだ。

コンビニが売り上げを増やすために講じた第2の対策は、取り扱い分野の拡大だった。店舗面積の制約があるなかで、コンビニは宅配便、公共料金や税金の支払い、ATMの設置、チケットの予約・発券など、さまざまな業務を追加してきた。また規制緩和の波に乗って、医薬部外品の健康ドリンク販売も行なうようになった。この戦略は、コンビニ経営に大きく貢献したが、さすがに取り扱い分野拡大のフロンティアは、少なくなってきた。

そこでコンビニが採り入れたのが第3の対策であるオリジナル商品の開発だった。ほかの業態、ほかのチェーンでは買えない商品を揃えることで、集客と付加価値の拡大を同時に図ろうとしたのだ。オリジナルの弁当だけでなく、最近ではパンもチェーン店オリジナルのものが目立つようになった。また、飲料でも、缶コーヒーやジュースでメーカーとタイアップをして、懐かしい商品の復刻版を発売したり、オリジナルの景品をつけるようになっている。

景品の質も劇的に向上しており、120円の缶コーヒーにつけられたオリジナルミニカーが、市販であれば数百円相当の品質をもつことも珍らしくなくなっている。オリジナル商品は、食玩やコレクター向けフィギュア、ボトルキャップ、ミニカーなどにも広がっており、コンビニチェーンの差別化戦略は大きく進展している。ただ、こうしたオリジナル商品開発戦略も、対象商品の飽和で行き詰まりつつある。

ナチュラルローソンは専門店に対抗できるのか

そこで、最近になって登場した第4の戦略が、いままでとはまったく発想の異なった「顧客層の絞り込み」なのだ。先駆けとなったのがナチュラルローソンだ。コンビニの集客範囲は、半径400メートル程度といわれる。しかし、ナチュラル・ローソンは、その2倍程度の集客範囲をもつという。その理由は、対象顧客を女性に特化することで、女性に魅力的な品揃えを充実させることができたからだ。

たとえば、ナチュラルローソンで売られる弁当は、量を少なく、ヘルシーな内容にすることで、ダイエットと健康を気遣う女性の心をつかんでいる。また、化粧品など、女性向け商品の品揃えも充実させた。さらには、棚の配置を変えることで、店内の移動時間を増やし、女性たちの「ついで買い」を誘う戦略も採用している。

こうした戦略は当面成功しているようにみえる。しかし、顧客層を絞り込むということは、対象とならない顧客を逃がすことにつながる。同時に、絞り込み対象層がそれまで出かけていた専門店との競合は激化する。たとえば、化粧品販売を強化するということは、百貨店や薬局との競争にさらされるということを意味するのだ。

専門店としてのノウハウがないコンビニがそうした他業態との競争に勝てるかどうかははっきりしないし、何より、コンビニの原点は、年齢層を問わずに平均的な消費者に対して利便性を売るということだった。顧客層の絞り込みは、コンビニの基本コンセプトに反する動きだ。逆にいえば、そこまでしないと売り上げを確保できないほど、コンビニの経営が追い詰められているということを、対象顧客の絞り込みは示しているのかもしれない。

コンビニの反転攻勢は、そう簡単には実現できそうにないのだ。

プロフィール

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究員
獨協大学特任教授
森永卓郎