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耐震強度偽装事件でマンション市況はどうなる!?

更新日:2006年01月26日

景気回復の途上で発生した耐震強度偽装事件でマンションの市況はどう推移するのだうか。買い控えが増えて冷え込んでしまうのか。それとも物件価格や金利水準などの条件からして購入意欲の低下には至らず、大きな影響はでないのか――森永氏が見通す。
 


 
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住み替え検討者の3割強が買い控え

1月16日、国土交通省は、姉歯秀次元一級建築士による構造計算書の偽造が川崎市内のマンションで新たに確認されたと発表した。これで、耐震強度の偽装物件は合計94棟となった。次から次へと発覚する偽装に、マンション市場が冷え込んでいくのではないかという指摘もなされるようになってきた。

そこでまず、偽装問題を消費者がどのようにとらえているのかをみよう。不動産ポータルサイトを運営するネクスト(東京)が昨年12月に行なったインターネットアンケートでは、住み替えを検討している人のうち33.7%が「住み替え自体を控えるつもり」と回答した。首都圏に住む人にかぎると38.6%が「控える」と回答した。

一方、NHKが1月10日に発表した世論調査の結果では、耐震強度偽装問題について「おおいに不安」と答えた人が17%、「やや不安」が27%、「あまり不安でない」27%、「不安でない」が26%となっている。全体としてみると、国民の3割から4割が耐震強度の偽装問題に不安を覚えているということになる。こうした状況は、マンション市場にどのような影響を与えるのだろうか。

昨年12月13日に不動産経済研究所が発表した11月の首都圏マンション動向によると、新規発売戸数は前年同月比2.3%減の7939戸となり、4カ月ぶりに前年同月比マイナスとなった。ただ、契約率は3.3ポイント上昇して83.7%となり、好調ラインの70%を10カ月連続で上回っている。

好条件が揃う都心のマンション購入

つまり、少なくとも11月までは、耐震強度偽装問題に関する市場への影響はほとんど出ていないというのが実情だ。もちろん12月実績で大きな影響がでている可能性は否定できないが、私は、大きなマイナスの影響はでてこないのではないかと考えている。その理由は、幸運なことに、現在は、大都市のマンション購入に好条件が揃っていることだ。

第1に、現在供給されているマンションの敷地のなかには、不良債権処理あるいは企業のリストラ関連で放出された土地が多い。不良債権処理は、昨年3月の金融再生プログラムの終結で、すでに峠を越えている。つまり、今後は好立地の物件が減ってくる可能性が高い。第2は、景気回復にもかかわらず、まだ地価の上昇が本格化していないので、物件価格はリーズナブルなところに収まっている。第3は、やや上昇してきたとはいえ、まだ住宅ローン金利が低い水準にある。

こうした好条件は、今後デフレ脱却のなかで失われていくのが確実とみられるので、いま都会のマンションを買うのは、非常に有利なのだ。だから、このチャンスを逃すまいと考える消費者は相当いるはずだ。

もちろん、耐震強度偽装事件がヒューザー・木村建設・姉歯建築士のルート以外に広がっていけば、消費者の「自分のマンションだけは大丈夫」という意識は吹き飛ぶだろう。その意味で、今後事件がどのように広がっていくのかが、住宅市場への影響を決定づけるといえるだろう。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎