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TBSが楽天にゆったりと対応した理由

更新日:2005年12月01日

敵対的買収を仕掛けるときのタネ銭には高い金利がつけられるのが普通だ。リスクの高い用途に使われるのだから当然のことで、買収が長引けば長引くほど、買収を仕掛けるほうにとっては金利のコストがかさむことになる。ここに森永氏はTBSがとった時間稼ぎともいえるゆったりとした対応の理由があり、まさにニッポン放送事件から学んだ最大の企業防衛策なのではないかと指摘する。
(11月24日時点での原稿です:編集部)
 


 
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フジテレビに比べTBSの対応は驚くほど冷静

楽天が提案したTBSとの経営統合の交渉がなかなか進展しなかったのは、TBSが楽天に対して質問状を送り、回答を得ると再び質問状を送るということを繰り返して、なかなか最終的な意思決定をしなかったからだ。

11月21日の段階でも、TBSは統合協議入りするかどうかの回答書の原案を、社内専門チームが作成している段階となっている。この原案をもとに役員会が楽天の統合提案を受け入れるかどうか最終判断するため、楽天への最終的な回答は12月にずれ込む可能性が高まっている。楽天がTBSの発行済み株式の15.5%を取得して筆頭株主となり、TBSに経営統合を申し入れていることが明らかになったのが10月13日だから、1カ月以上経って、ほとんど事態が進展していないということになるのだ。

ライブドアによるニッポン放送株の買占め事件のときには、ライブドアとフジテレビの双方が駆け引きを続け、新株予約権の発行表明や差し止め請求など、さまざまな対応策が採られたため、マスメディアも連日報道を続け、国民の関心も高かった。それに比べると、今回のTBSの対応は、驚くほど冷静沈着だ。楽天を非難するでもなく、まるで他人事のように、淡々と対応を進めている。

しかし、私はTBSがとったこの時間稼ぎともいえるゆったりとした対応こそが、ニッポン放送事件から学んだ最大の企業防衛策なのではないかと考えている。

ニッポン放送事件のとき、フジテレビは一日も早くライブドアに手を引いてもらおうと、ライブドアからのニッポン放送株の買取やライブドアへの出資などで最終的に1470億円もの資金負担をすることになった。これは敵対的M&Aを仕掛けたライブドアにとって、かなり望ましい結末だった。フジテレビの経営権を取得することはできなかったが、短期間で巨額の資金を引き出すことに成功したからだ。

楽天はTBSとの業務提携だけで妥協か

敵対的買収を仕掛けるときのタネ銭には高い金利がつけられるのが普通だ。リスクの高い用途に使われるのだから当然のことだ。ということは、買収が長引けば長引くほど、買収を仕掛けるほうにとっては金利のコストがかさむことになる。たとえば、村上ファンドは、投資家に対して年間30%程度の利回り目標を掲げているといわれる。

たんに企業の株式を保有しているだけでは、そんな高い利回りを稼ぎ出すことなどできないから、次から次へと投資対象をみつけて、収益を稼いでいかなければならない。資金を塩漬けにすることだけは、絶対に避けなければならないのだ。楽天の場合は、資金調達の金利はTBS株の配当でまかなえるので、問題はないとしている。

現時点では、本当にそうなのかもしれない。しかし、楽天のメーンバンクである三井住友銀行と、準メーンのみずほコーポレート銀行は、「敵対的買収に発展した場合、必要資金は融資できない」と楽天に通告している。敵対的買収に協力したとなれば、銀行のイメージダウンが避けられないからだ。

そうなると、かりにTBSが経営統合を拒否して、楽天が株式公開買い付け(TOB)による敵対的買収に踏み切ったとき、楽天は必要となる資金を外資系投資銀行などから調達するしかなくなる。公募増資という手もあるが、いまの状況で株式市場からの資金調達を強行すれば、株価の下落が避けられないからだ。

そして、もし外資系投資銀行から資金調達するとなれば、相当高い金利を払わなければならない。TBS株の配当利回りは0.5%に過ぎないから、配当で金利をまかなえることなどあり得ない。そうなると、統合交渉が長引けば長引くほど、楽天は体力をすり減らしてしまうのだ。

結局、楽天はTBSと業務提携を結ぶことだけで妥協せざるを得ないのではないだろうか。もちろん株式公開買い付けに打って出る可能性は残されているが、それは楽天の経営自体を揺るがすほどの危険な賭けになってしまうだろう。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎