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郵政民営化で本当に得するのは誰か!?

更新日:2005年09月08日

きたる9月11日に投開票される衆院選のテーマである郵政民営化。政局にスポットが当てられすぎて、民営化の本質が見えにくくなっている。そもそも何を民営化の問題とすべきなのだろうか。エコノミストの視点から本質を読み解く!
 


 
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反対派が問題視したポイントに潜む経済効果

解散総選挙を決めた小泉総理は「この選挙は、郵政民営化に賛成するか、反対するか、国民にその信を問う選挙だ」といった。ただ、郵政反対派の急先鋒と言われる小林興起前議員や国民新党の綿貫民輔代表も含めて、造反議員のほとんどは郵政民営化そのものには賛成している。彼らは参議院で否決された郵政民営化法案の問題点を指摘して、さらなる議論と法案の修正を要求してきただけなのだ。

じつは、反対派が問題視したポイントにこそ、郵政民営化をしたときの本当の経済効果が潜んでいると私は考えている。そのポイントは大きく分けると次の3点だ。

第一は、法案が郵政事業を分割するとしたことだ。経済学には範囲の経済性という言葉がある。異なる事業を同時に行なうことで、効率性が高まるということだ。郵便、貯金、保険の三事業を同時に行なえば、たとえば社長はひとりでよいし、制服も一種類でよい。結婚すると独身時代の二人よりも生活費が下がるのと同じで、三事業一体のほうがコストは低いのだ。そのことは、これまでのシンクタンクや学者による分析でも明らかにされている。

第二は、法案が郵便貯金会社と郵便保険会社の株式を完全放出するとした点だ。売却した株は誰が買うのか。郵便貯金と簡易保険は、メガバンク全体を超える資金量をもつのだから、メガバンク全体に近い時価総額がついてもおかしくない。現在、りそな銀行を含めた5大メガバンクの時価総額は25兆円に達しているから、郵便貯金会社と郵便保険会社の時価総額は、少なくとも10兆円程度にはなるだろう。

そんな巨額の資金を出せるのは、現時点では外資しか考えられない。実際、金融専門家の間では、少なくとも簡保は外資に買収されるだろうといわれている。また国会審議のなかで、政府は郵政民営化準備室幹部が過去17回、米国生命保険協会などと接触した事実を認めているのだ。

民営化すれば、利は財務省とアメリカに?

第三は、郵便貯金と簡易保険のユニバーサルサービスが保証されていないということだ。郵政民営化法案では、過疎地域に立地する7220の郵便局網は維持されることになったが、そこで郵便貯金や簡易保険のサービスが提供される保証は与えられなかった。 金融サービスを提供する拠点には大きなコストがかかる。

たとえば、新しく発足する三菱UFJフィナンシャル・グループでも、リテールの国内店舗数は912に過ぎない。しかも平成20年度までに170店舗が統廃合される予定になっている。民営化された新会社が、2万4700もの郵便局で金融サービスを提供し続けるとは考えにくい。

結局、郵政民営化で何が起こるのかといえば、民営化会社が分割でコストの上がった分を取り返そうと猛烈な合理化に打って出るのだろう。固定資産税の負担も増えるし、法人税も払わなければならないのだから、存続していこうと思えば、当然のことだ。そのなかで、過疎地の郵便局からは、金融と保険の機能が失われていくだろう。

さらに大きな問題は、外資が郵便貯金や簡易保険を買収したときに何が起こるのかだ。おそらく、新会社は国民から預かった資金の運用をアメリカ国債に振り向けるだろう。表面的にはアメリカのほうが金利が高いのだから、そのことを非難することは困難だ。しかし、アメリカは世界最大の債務国であるうえに、いまでも毎年70兆円もの赤字を積み増ししている。つまり、ドルは暴落の危機に瀕しているのだ。もし、ドルが暴落すれば、国民の大切な金融資産が半減してしまっても不思議ではない。

結局、郵政民営化で儲かるのは、法人税や株式収入で財政が潤う財務省と、財政赤字を日本人の貯蓄で賄ってもらえるアメリカだけではないのだろうか。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎