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猛暑で儲かるビジネス、じつは……

更新日:2005年08月11日

夏場の気温が1度上がると夏物消費が1500億円増えるという。猛暑のなかで夏物商戦はますますヒートアップしていくだろうが、じつは猛暑でいちばん潤うかもしれないビジネスは意外なところに潜んでいた。さて・・・。
 


 
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気温が1度上がると夏物消費が1500億円増える

梅雨明けとともに35度を超える最高気温が記録されるなど、昨年に続いて猛暑が日本列島を襲っている。猛暑が続くと、経済にどのような影響がでるのだろうか。じつは、シンクタンクで景気を予測する人たちの間では、「気温が上がると、夏物消費が増える」という現象が、もはや常識となっている。

推計する経済モデルやデータの期間によって微妙な差があるが、大雑把にいうと、夏場の平均気温が平年に対して1度高くなると、夏物消費が1500億円増え、それが年間の消費を0.05%引き上げるというのが、これまでの研究結果となっている。

具体的な商品でいえば、エアコン、ビール、夏物衣料、そしてアウトドア用品やレジャー関連施設の売り上げも、気温が高くなるほど増える傾向をもっている。また、電力消費もエアコンの使用が増えるので、気温が高くなるほど増えていく。

ただ、こうした商品はいわば夏の定番商品で、猛暑で売り上げが増えるのはいってみれば常識だが、じつは猛暑で一番儲かるのは損害保険会社だといったら、不思議に思われるかもしれない。その秘密は「天候デリバティブ」という商品にある。

具体例でご紹介しよう。宮古市の浄土ケ浜で観光船を運航する岩手県北自動車は、今年、「宮古で7月20日からの1カ月間の平均気温が19.74度を下回った場合、掛け金の4〜5倍程度の補償金を受け取れる」という契約を保険会社と結んだ。観光船の乗客数が冷夏と暑い夏では10倍以上も違ってしまうからだ。

もし冷夏になった場合は、契約した天候デリバティブから補償金がでるので、売上減を埋め合わせることができるし、猛暑になった場合は本来の売り上げが増えるので、補償金が払われなくても問題はない。つまり、天候デリバティブは、加入する会社の経営リスクを減少させるのだ。

損害保険会社が猛暑で潤う理由

天候デリバティブは、あらかじめめ契約で決めた気温や雨量などの条件が満たされたときに補償金が支払われる。損害保険とよく似ているが、損害保険は実際に生じた被害の範囲内で保険金が支払われる。これに対して天候デリバティブは、実際の被害額がいくらであろうと、契約した条件が満たされれば、自動的にお金が支払われることになっているのが特徴だ。

ただし、猛暑をビジネスチャンスとしているのは天候デリバティブだけではない。本来の損害保険でも、天候を基準とする商品が登場している。たとえば、東京海上日動火災保険は7月20日に修学旅行変更保険を発売すると発表した。これは、修学旅行中の生徒や引率する教師が対象で、台風などで交通機関の運休や遅れが生じた場合に、宿泊料、食事代、交通費などの追加支出を補償するものだ。

また、三井住友海上保険も、屋外で実施するイベントが雨で中止になった場合に、アルバイト代や会場使用料を補償する「興行中止保険」を発売している。もちろん、天候デリバティブも天候保険も、猛暑になった場合に補償金が支払われるケースもありうるのだが、実際には冷夏の被害を補償するタイプが圧倒的に多い。

だから、猛暑であれば損害保険会社は補償金をほとんど払わなくてよくなるのだ。じつは猛暑をいちばん望んでいるのは、損害保険会社なのかもしれない。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎