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クールビズの経済効果を実証する!

更新日:2005年07月14日

省エネ対策として政府が提唱した「夏のビジネス軽装」(クールビズ)。流通各社がボタンダウンシャツの売り上げを伸ばしているなど一定の経済効果が現われているが、景気全般への波及効果となるとどうだろうか?森永氏がズバリ検証する。
 


 
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クールビズの生産波及効果は1008億円!?

省エネ対策として政府が提唱した「夏のビジネス軽装」(クールビズ)が6月1日からはじまった。ネクタイを外して、少しでも冷房設定温度を高くして、省エネに結びつけようとするものだ。

夏の軽装自体はけっして新しい発想ではない。羽田内閣のときに羽田孜首相は、半袖の「省エネスーツ」を着用して、夏の軽装を提唱した。羽田氏は総理大臣を辞めた後も省エネスーツを着用し続けたが、残念ながら社会に定着しなかった。省エネスーツの見た目が、お世辞にもよいとはいえなかったからだ。

今回のクールビズは、省エネスーツのようなお仕着せではなく、ネクタイを外して、おのおのが自由にファッションを考えることになっている。小泉純一郎首相や閣僚に続いて、霞ヶ関や地方自治体が導入したことがきっかけで、銀行やスーパーなど民間企業にも、クールビズは広がりはじめた。環境意識の高まりとともに、やはり服装を固定しなかったことがクールビズの普及を促したのだろう。

また、そのことは経済にもプラスの効果を与えている。クールビズは、ネクタイを外すだけではなく、ノーネクタイにふさわしいファッションを工夫する必要がある。その主役はボタンダウンシャツだ。クールビズの導入から1ヶ月が経ち、流通各社はボタンダウンを中心にシャツの売り上げを伸ばしている。

たとえば、イオンはシャツのバリエーションを増やすことで、6月の売り上げが前年を60%近く上回っており、三越本店も関連フェアで売り上げを40%増やしている。第一生命経済研究所は、6月3日に「クールビズの生産波及効果は1008億円」とするレポートを発表した。

このレポートでは、内閣府の試算でクールビズ関連商品一式が、シャツ、スラックス、靴、ベルト、ジャケット、アンダーェアの合計で13万円としていることを根拠に、サマースーツを新調するときの費用(9万円)との差額4万円を、百貨店で購入した場合のひとり当たりの支出増とした。

また、紳士服量販店では、商品単価が半額程度になることを踏まえて、最終的なひとり当たりの支出増は3万円と想定している。この支出増を、制服のない男性国家公務員全員と民間企業・地方自治体のホワイトカラーの12.3%(アンケート調査から算出)が行なうと仮定して、消費増の金額を計算すると619億円という効果が得られた。

シャツの売上増とネクタイの売上減が相殺

これは四半期の名目国内総生産(GDP)を0.05%押し上げる効果をもっている。ただ、年間に直せばGDP成長率を0.01%押し上げるだけなので、さほど大きな効果ではない。

また、この消費増を産業連関表に与えて生産波及効果を計測すると1008億円となるが、これはシャツの売上増が、アパレル業界に繊維を供給する繊維メーカーの売上を増やすといった間接効果を含めたものだ。1000億円の生産波及効果というのは、ちょうど阪神タイガースが優勝したときにいわれた経済効果と同じ水準だ。

だから、阪神タイガースが優勝しても景気が回復しなかったのと同様、クールビズが想定通りの効果を発揮しても、そもそも景気が回復するほどの効果はないのだ。

しかもクールビズの経済効果は、さらに小さくなる可能性が高い。クールビズ関連で売れているのは、シャツばかりで、内閣府が想定したジャケットやスラックス、靴、ベルトなどはあまり動いていないのだ。また、開襟シャツが売れる一方で、ネクタイの売上減が懸念されている。実際、父の日のプレゼント商戦では、シャツが売上増となった反面、ネクタイの売り上げは減少した。

細田博之官房長官は、6月17日にクールビズ導入後、はじめてネクタイ姿で公務をこなした。6月8日に日本ネクタイ組合連合会がクールビズ運動で打撃を受けていると、小泉内閣の全閣僚に要望書を出したことに配慮したためとみられている。結局、クールビズの経済効果はシャツの売上増とネクタイの売上減が相殺して、最終的には、あまり大きな効果をもっていないということになるのではないだろうか。

それはそれでよいのではないかと思う。もともと、クールビズは経済効果のためでなく、環境対策のためにはじめたものなのだから。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎