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消費者心理が先か、景気が先か

更新日:2005年06月16日

景気の「気」という字から、消費者の気、つまり消費マインドが景気を大きく左右するという見方がある。たしかに、そのとおりだが、指数を用いて定量的に分析すると?今回は、消費者心理と景気との関係を読み解いた!


 
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消費者意識を調べる5つの項目

「景気」という言葉のなかには「気」という文字が含まれている。たしかにマインドは景気に大きな影響を及ぼすというが、いったい、どの程度の影響があるのだろうか。マインドをどのようにとらえるのかというのは、本当は難しい問題だ。ところが、政府は消費者マインドをとらえる調査も行なっている。内閣府が約5000世帯を対象に4半期毎(一部月次)に調査をしている「消費動向調査」だ。

この調査のなかに消費者意識を調べる項目がある。まず、(1)暮らし向き、(2)収入の増え方、(3)物価の上がり方、(4)雇用環境、(5)耐久消費財の買い時判断、の5項目について、今後半年間にいまよりもどのように変化すると考えているか、5段階評価で消費者に回答を求めているのだ。

5段階の回答にはポイントが与えられて集計される。「良くなる」は(+1)、「やや良くなる」は(+0.75)、「変わらない」は(+0.5)、「やや悪くなる」は(+0.25)、「悪くなる」は(0)という具合いだ。それぞれの回答区分の構成比(%)にこのポイントを乗じて合計したものが、項目毎の消費者意識指標となるのだ。そして最後に、これら5項目の消費者意識指標を単純平均したものが、消費者態度指数ということになる。

消費者心理を調べるのに、この項目を調査することでよいのかどうかは、議論が分かれるだろうが、具体的な項目建てをしないと、「心理はどうですか?」と聞かれても消費者は答えられないだろう。

消費者態度指数から読み解く

消費者態度指数の推移をみると、2000年9月に下落トレンドに入った後、2001年12月に底をつけて反転、その後、2002年6月から2003年3月まで一時的に下落するが、その後再び上昇トレンドに入って現在を迎えている。2003年3月というのは、金融危機が叫ばれ、日経平均株価が翌4月28日に7607円のバブル崩壊後の最安値をつけた時期だ。そうした意味も含めて、消費者態度指数は、経済状況をじつによく反映しているようにみえる。

ただ、定性的な話をしていても仕方がないので、実際に消費者心理がどの程度経済実態を説明しているのかを検証してみよう。消費動向調査は、2004年4月以降「物価の上がり方」を調査項目から外すなど、調査自体の改訂が行なわれているので、1995年3月から2004年3月までの四半期データで、景気が消費者態度指数によって、どの程度説明できるのかを検証してみよう。

まず実質GDPの前年同期比を、消費者態度指数がどの程度説明しているのかを、回帰式をとって調べると、決定係数は0.33となった。これはGDP伸び率の変化の33%は、消費者態度指数で説明できるということになる。ちなみに消費者態度指数のP値(相関が逆である確率)は0.05%だったから、GDPの伸び率と消費者態度指数の間に正の相関があることは、間違いない。

ただ、同じことを、消費の前年同期比と消費者態度指数の間で行なうと、決定係数は0.09となる。つまり、消費の伸び率変化の9%しか、消費者態度指数は説明していないことになる。これはじつに不思議なことだ。消費者態度指数が上がれば、GDPよりも敏感に消費が反応すべきだからだ。

だから、もしかしたら、消費者心理が明るくなることで、景気がよくなるのではなく、景気がよくなることによって、消費者心理が明るくなるのではないだろうか。そのほうが、実感に近いような気がする。明るく振る舞ったら給料が増えるというより、給料が増えたら明るく振る舞えるというほうが、生活実感に近いからだ。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎