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3つの理由から外食市場は横ばいで推移

更新日:2005年04月28日

外食産業は経済を映す鏡――森永氏はそう指摘する。中食市場の成長や外食機会の減少などで、外食市場の伸びが止まっている。今後の見通しはどうだろうか?
 


 
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外食産業の急成長はバブルのピークまで

社団法人日本フードサービス協会によると、04年の外食産業売上高は、前年比1.5%増となった。前年がBSE騒動のあおりで、史上はじめて前年比0.3%のマイナスに転落していたから、ひと安心ということになる。

しかし、昨年の外食産業の売り上げが伸びたのは、客単価が上がったからで、利用客数はまったく増えていない。また店舗数は前年比3.4%増えているが、増えない利用客数を奪いあう形となったため、既存店売り上げは、前年比2.8%も減っている。

じつは、外食産業は経済を映す鏡だ。景気の動向と社会の構造変化で市場規模が敏感に動いていくからだ。外食産業が急成長したのはバブルのピークまで、つまり日本経済が高度成長から安定成長を続けている間だけだった。

その間の成長要因として、興味深いデータがある。外食産業総合調査研究センターの調査によると、食の外部化率(広義の外食産業市場規模÷年間の食品・食料支出額)は、75年に28.5%だったのが急上昇し、90年には41.2%に達した。しかし、その後の食の外部化率は、伸びが大幅に緩やかになり、02年には43.6%となっている。

この外部化率の上昇は、90年代までの外食産業の急成長が、たんに所得上昇によるものだけではなく、ライフスタイルの変化に裏付けられたものであることを物語っている。外部化率上昇の背景にあるのは、女性の社会進出、シングル化、個食化、生活時間の24時間化という一連の変化だ。そして、その核はシングル化だ。

03年の「家計調査」で外食費が消費支出の何%を占めているのかを世帯構造別にみると、まず35歳未満の世帯では、「2人以上世帯」が5.0%、「女性単身世帯」が8.1%、「男性単身世帯」が14.4%と、圧倒的にシングル世帯の外食比率が高くなっている。

また35〜59歳の世帯でも、「2人以上世帯」が4.2%、「女性単身世帯」が5.0%、「男性単身世帯」が12.4%と、数字のレベルは下がるものの、構造自体は同じになっている。

中流の崩壊は外食産業に逆風

さて、今後の外食産業市場の動向については、私は3つの要因が関与してくると思っている。

第一は、所得の伸びだ。ただし、これはほとんど期待できないだろう。今年の春闘で賞与の満額回答を勝ち取った自動車産業でさえ、ベアを要求しない時代になったからだ。

第二は、シングル化の進展だ。これは、確実に進むので、外食産業にとっては追い風となろう。しかし、現時点ですでに30歳台前半男性の約半数が非婚となっているため、今後のシングル化は、これまでのようなハイスピードでは進まないだろう。

第三は、所得格差の拡大だ。市場原理主義化をめざす構造改革路線の下では、弱肉強食化が進展する。そこで外食市場に何が起こるのか。

「家計調査」で年間収入5分位階級(所得の低いほうから並べて家計を5分割し、それぞれの平均をみたもの)ごとにみると、消費支出のなかに外食費が占める割合は、第1分位(年収187万円)が4.2%、第2分位(年収341万円)が5.0%、第3分位(年収481万円)が4.9%、第4分位(年収677万円)が5.0%、そして第5分位(年収1129万円)が4.5%となっている。

つまり、外食費は中流家庭で多く、所得の低い人と高い人は、あまり外食産業を利用しないということになる。いま起こっている社会構造変化は、まさに中流の崩壊だから、外食産業にとっては、逆風になるだろう。

以上をまとめて、今後の外食産業市場をみると、(1)所得要因で横ばい、(2)シングル化要因で漸増、(3)所得格差拡大要因で漸減、という形になる。このため、外食産業市場の規模は、中長期の横ばいが続くのではないだろうか。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎