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ニッポン放送株争奪戦の本質を突く!

更新日:2005年03月31日

ライブドアはニッポン放送の経営権を取得できるのか。ニッポン放送の企業価値はどう推移していくのか。立場によって見解が異なるなかで、いまもっともホットな話題について、森永氏が行方を見通した!
*この原稿は3月14日ごろに書かれたものです(編集部)
 


 
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「週刊文春」発行差し止め裁判の例

ライブドアがニッポン放送の新株予約権の発行差し止めを求めた仮処分申請で、東京地裁は3月11日に新株予約権の発行を禁止する仮処分命令を出した。東京地裁はライブドア側に軍配を上げたことになる。ニッポン放送が即時に異議申し立てをしたことから、今後は再度東京地裁での異議審が行なわれ、さらに両社が争う場合は、東京高裁での抗告審、最高裁での特別抗告審と続いていくことになる。

東京地裁は、昨年3月19日に田中真紀子氏の長女の私生活に関する記事を週刊文春が掲載した事件のときも、発行差し止めの仮処分を決定した。異議審では決定は覆らなかったが、最終的に東京高裁が原決定を取り消して決着しているから、今後裁判所の判断が覆る可能性も十分ある。

だが、異議審で判断が覆らなかった場合、24日の新株予約権の発行日までに東京高裁の判断が間に合うかどうかは微妙だ。

いずれにせよ、新株予約権の発行が3月25日の株主名簿確定に間に合わない場合、株式市場ではライブドアが過半数の議決権をめざして株式取得を進めていくだろうし、もしそれに成功すれば、ニッポン放送に過半数の役員を送り込んだうえで、ニッポン放送の資産をバックに資金調達を行ない、今度はフジテレビの買収に動いていくだろう。

一方、ニッポン放送側にも対抗策がある。保有するポニーキャニオン株やフジテレビ株をグループ企業に売却してしまうという「焦土作戦」だ。不当に安い価格で売却すれば株主代表訴訟の対象となるが、将来にわたってニッポン放送に収益が還元されるようなオプションをつけて売却すれば、安値売却は違法にはならないと金融の専門家は指摘する。

ライブドアとフジテレビの業務提携で決着か?

また、フジテレビが3分の1超の株式を取得したことから、フジテレビはニッポン放送の株主総会で特別決議が必要な重要事項に関する拒否権を行使できるため、ライブドアが経営権を取得しても、完全に自由な経営ができるわけではない。さらに、フジテレビがニッポン放送の4分の1以上の株式を保有したため、商法の規定でニッポン放送は保有するフジテレビ株の議決権を失っている。

ただ、ライブドアは経営権取得後、関連会社にフジテレビ株を譲渡すれば、議決権が復活することになる。

こうした闘争を長く続けていけば、フジテレビもライブドアも体力をすり減らしていくし、一番の問題はお家騒動のなかで、ニッポン放送の企業価値がずるずると減っていくということだ。そうした事情は、フジテレビもライブドアも十分わかっているだろう。

だから、堀江社長もフジテレビの日枝会長も提携の可能性に言及しはじめている。おそらく、今後フジテレビがライブドアから業務提携と引き換えにニッポン放送株を買い取るというのが一番ありうるシナリオだろう。

そうなると、結局一番被害を受けたのはニッポン放送ということになる。そもそも堀江社長が欲しがったのはフジテレビでありポニーキャニオンだ。堀江社長はニッポン放送を欲しいとは思わなかっただろうし、おそらくまともに放送を聞いたこともなかったはずだ。

事業をやる気のない人、愛情をもたない人が支配権を握れば、放送は駄目になり、ニッポン放送の企業価値は明らかに減少する。それを無条件に認めた今回の判決は、私はやはりおかしいのではないかと思う。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎