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どこへ向かう!? 団塊の世代の退職金

更新日:2005年03月03日

2007年問題――2007年に1947年生まれが60歳を迎え、以降3年間、団塊の世代が毎年60歳を迎えていく。この世代が手にする退職金は一大市場を形成しうる金額におよぶが、どこへ流れるのか?団塊の世代が「仕事の現役」を続行するかどうかにかかっている。
 


 
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2007年以降3年間で700万人が60歳に

最近では「2007年問題」という言葉まで一般で使われはじめた。2年後から、団塊の世代の定年退職がはじまるという問題だ。

団塊の世代とは、昭和22年から24年、太平洋戦争直後のベビーブームに生まれた世代のことだ。わずか3年間に700万人もの人口の塊があり、この世代が一気に定年を迎えるのだから、経済にも大きな影響を与えざるをえない。とくに、これからこの世代が退職金を手にするということは、その使い道によっては産業構造が変わってしまうくらいのインパクトをもつだろう。

そこで、まず今後どれだけの退職金が見込まれるのかを、大雑把に計算してみよう。2003年の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、55〜59歳の労働者数は199万人となっている。この統計は一般労働者だけが集計対象でパートタイマーを含んでいないから、この労働者が退職金をもらうと考えてよいだろう。

一方、2003年の厚生労働省「賃金事情等総合調査」によると、定年退職の場合の平均退職金額は2040万円。単純にかけ算をすると、55〜59歳が受け取る総退職金は40兆5960億円、1歳当たり8兆1192億円ということになる。もちろん、退職金制度のない企業も多いから、本当の支給額はこれより小さいと思われるが、相当大きな退職金が支給されることは間違いない。

無為の日々を過ごすケースが多いのか

ただ、この金額がどこへ行くのかを考える前に、「賃金構造基本統計調査」の労働者数で注意しておくべきことがある。それは55〜59歳が199万人であるのに対して、50〜54歳が255万人もいるということだ。団塊の世代よりもはるかに人数の少ない5歳年下の世代のほうが、企業に残っている人数が多いのだ。

実際に団塊の世代の人に話を聞くと、すでに多くの人が早期退職の道を選んでいるという。そうした人は、すでに退職金を手にしているから、団塊の世代が退職金で何か違ったものを買うとすれば、その変化はすでに現われているはずなのだ。ところが、現状で消費市場に大きな変化がないということは、団塊の世代が退職金で何か大きな消費をしているわけではないということだろう。

ただ、それでも団塊の世代が定年年齢を迎えることの意味合いは大きい。60歳を迎えれば、会社の呪縛から解き放たれるから、どこに住んで何をしようと自由になるからだ。

私は団塊の世代が定年後に迎えるライフスタイルには、ふたつのシナリオがあると思う。ひとつは、会社の縁が切れてしまって、することがなくなり、家に閉じこもってテレビばかりみているという生活だ。このライフスタイルだと、退職金は年々減っていく年金の穴埋めに使われるだけなので、当面は貯蓄として積み立てられるだけだろう。

もうひとつのライフスタイルは、定年を機に、いままで叶えられなかったことに、思い切ってチャレンジする生活だ。農村に移り住んで有機農業をするとか、南の島でダイビングショップを開くとか、オリジナルの小物を作る工房をもつとか、観光地に博物館を作るといった具合だ。この場合には、退職金は投資としてさまざまな産業を潤すことになる。

私は、日本経済全体のためにも、後者のライフスタイルを選択してほしいが、正直いって前者のライフスタイルが主流を占めるのではないかと心配している。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎