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IT長者ブームはいつまで続くのか

更新日:2005年02月03日

ITに載せれば何でも儲かるという神話はすでに消えたし、金融や映画など有望な分野には先行企業がひしめいている。IT長者の誕生のペースダウンは避けられまいが、ITの新たな使い道を発掘できれば……。
 


 
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実業に裏付けられたIT成功企業

昨年は、プロ野球球団の買収にライブドアの堀江貴文社長、楽天の三木谷浩史社長やソフトバンクの孫正義社長などが名乗りを上げ、IT長者の豊かさぶりがクローズアップされた1年だった。いまの世の中、金持ちになりたかったらIT企業を設立し、創業者利益を獲得するのが一番だという認識は、世間に大きく広がったと思われる。

実際、彼らのビジネスモデルは、当初立ち上げた会社の株式の上場益や含み益を使って、次々に新規事業の会社を買収していくというところで共通している。

しかし、IT企業を設立すれば、たいていの会社に高い株価がついて創業者利益を得られるという成功方程式が通用したのは、2000年のITバブル最盛期までで、それ以降は非常に難しくなっていると考えるべきだろう。いま生き残っているIT成功企業のビジネスモデルが、しっかりした実業に裏付けられているからだ。

たとえば楽天の主力事業は、インターネット通販というとても地味な事業だし、IT分野で最大の成功者となったソフトバンクも、ヤフージャパンのメインの事業は必ずしもITそのものではないのだ。

たとえばヤフージャパンの事業部ごとの売上構成を03年度通期でみると、メインの事業として頭に浮かぶリスティング事業は18.0%を占めているに過ぎず、オークション事業が27.5%、ショッピング事業が8.7%、Yahoo!BB事業が16.8%などとなっている。ヤフーは実業でカネを稼いでいるのだ。

また、孫社長がブロードバンド事業成功の次に強い参入意欲を示しているのが、携帯電話事業であることを考えても、ITビジネスの世界が実業中心になってきていることがわかるだろう。

IT長者誕生はペースダウンか?

「ITに載せれば何でも儲かる」というIT神話のメッキがはがれ、ITの得意な分野がかなり明確に絞り込まれてきたというのが、このところの変化なのだろう。もちろん、ITを活用したビジネスで今後の成長が期待される分野はいくつもある。音楽や映画の配信、金融取引といった分野は今後も成長を続けていくと思われる。

ただ、そうした分野は、すでに先行企業がしっかりと押さえているので、新規参入組が急成長していくことはあまり期待できない。今後、新たなIT長者が生まれてくるとすれば、これまであまり普及してこなかった新しいITの使い道を創り出した人ということになるだろう。

たとえば、同好の参加者を集めて新しい商品を作り出す「共同購入」や「インタラクティブ」の書籍や映画は今後市場を大きくしていくと思う。インタラクティブの書籍や映画というのは、見る人の選択によって展開や結末が変わってくるタイプのもので、セガはSFドラマ「謎の円盤OFO」をDVDインタラクティブムービーとして再構築し、2月24日に発売すると発表している。

ただ、それでもITを活用できる事業は、すでに相当程度実現しているため、今後のIT長者の誕生は、ペースダウンが避けられないのではないだろうか

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎