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新興証券市場は正しく機能するのか

更新日:2005年01月06日

西武鉄道と日本テレビ放送網。ともに有価証券報告書への虚偽記載で処罰されたが、処罰は公平だったとは言い難い。証券取引所に転換したジャスダックが問われているのは、審査やペナルティのバランスのとれた運営である。
 


 
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注目されるのは西武鉄道の上場審査

12月13日にジャスダックが証券取引所に転換した。これまでは新興企業向けの店頭市場として証券取引所の補完をしてきたが、これを機に「ジャスダック証券取引所」として他の証券取引所と並列の関係になったのだ。その結果、先物取引や成り行き買い注文などの売買手法が解禁されたほか、他市場への重複上場も認められるようになった。

一方でジャスダックは証券取引所として自立するわけだから、これまで幹事証券会社に事実上依存していた上場審査も自前で行なわなければならなくなる。そこで注目されるのが、西武鉄道の上場審査だ。

有価証券報告書に虚偽記載をしていたとして東京証券取引所から上場廃止の処分を受けた西武鉄道は、現在ジャスダック市場への上場をめざしている。ところがそのことへの批判が強いのだ。

「投資家は西武鉄道の報告を信じて取り引きをしたのに、虚偽記載が明らかになったことによって株価が下落し大きな損失を蒙った。その原因を作った西武鉄道が、短期間に別の証券取引所に上場するのは許せない」というのが多くの国民の感情だろう。それは正論なのだが、私はあえて別の見方をしたい。

11月19日に東京証券取引所は日本テレビ放送網株を監理ポストから解除すると発表した。有価証券報告書の虚偽記載は、財務諸表にまでおよんでいたが、西武鉄道の場合と違って、浮動株の比率がさほど違わなかったことや、株式の名義変更事務を自社で行うようなことをしていなかったこと、公表前にインサイダー取引を疑われるような行為に関与していなかったことが、上場廃止には至らなかった原因とされている。

もちろん東京証券取引所は、無罪放免にしたわけではなく、日本テレビ放送網に対して改善報告書の提出を命じている。しかし、上場廃止の西武鉄道とは天国と地獄くらいの差のある決定をしたことになる。

バランスのとれた運営が大切

私は日本テレビ放送網に対する東京証券取引所の決定は妥当だと思う。むしろ、西武鉄道株の上場廃止決定のほうが理不尽だと思うのだ。西武鉄道は自ら虚偽記載を公表した。インサイダー取引を疑われる株取引も基準違反を解消しようとしたもので、しかも買い戻し請求などのペナルティをすでに受けている。

西武鉄道の株価は、虚偽記載の発覚で半額になり、東京証券取引所の上場廃止発表でさらに半額になった。東京証券取引所の判断は、虚偽記載と同じ程度のインパクトをもっていたということだ。

西武は、「西武グループ経営改革委員会」を発足させ、経営を抜本的に見直す方針を早くから表明している。しかし、ジャスダックの永野紀吉会長兼社長は11月17日の会見で、西武鉄道の早期上場は困難との見解を表明した。もちろんジャスダックなどの新興市場にが上場企業に対して適切な情報開示を厳しく求める姿勢は不可欠だ。

しかし、不正が発覚したさいなどに、どのようなペナルティを与えるのかも含めたバランスのとれた運営も同時に求められる。その意味で、ジャスダックは世論を気にするのではなく、バランスを失わない上場審査をしてほしい。その判断は重いのだ。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎