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メディアを鵜呑みにしないニュースの読み方

更新日:2004年11月04日

新聞報道が正確とはかぎらないとわかっていても、多くの人は報道内容を情報源にしている。当然、報道内容を鵜呑みにすれば、ミスリードされてしまう。その通弊を回避する対策は、ビジネスに携わる身ならば必須科目。さまざまな報道が飛び交った「ダイエーの産業再生機構活用」を例に挙げよう。
 


 
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ダイエー問題を新聞各紙はどう報道したか

われわれの生活のなかで、経済関連のニュースソースは、何といっても新聞だ。インターネットで流されるニュースも、テレビやラジオのニュースも、新聞の記事をもとに取材をしたり、新聞記事そのものを紹介することが多い。だから、ついつい新聞に書いてあることは正しいし、新聞には世の中で起こったことが網羅的に書かれていると勘違いしてしまう。

しかし、新聞に書かれていることは、じつは相当偏っており、ひとつの新聞だけを読んでいると世の中の動きを誤解してしまうのだ。たとえば、最近では一番大きな経済ニュースとなった「ダイエーの産業再生機構活用」を新聞各紙がどのように扱ったのかをみよう。

10月13日夜、ダイエーは臨時取締役会を開催して、それまで一貫して拒否してきた産業再生機構の活用を決議した。主力3行から産業再生機構送りを通告されてから48日目の高木社長の陥落だった。

まず、14日の日本経済新聞は「独自再建では主力取引銀行からの支援が得られないと判断、信用力確保へ決断した」と報じた。日経新聞だけを読んだ人は、ダイエーが自らの経営判断で経営再建のために産業再生機構へ支援要請をしたと思っただろう。 しかし、それでは高木社長がなぜ1カ月半にもおよぶ抵抗を止めたのかは明らかでない。

これに対して産経新聞は「主力三行は再生機構なしにダイエー再建は困難として機構活用を強く要求。融資など支援の打ち切りを持ち出し、監査法人が中間決算を承諾しないおそれが強まったため、ダイエーは方針転換せざるを得なかった」と報じた。銀行と監査法人の圧力に負けたというのだ。

「横読み」と「縦読み」で全体像を把握する

ただ、表面的にはそうだとしても、銀行は前から圧力をかけていたし、すでに終わった8月期の決算を監査法人が承認しないというのも理不尽な話だ。その疑問を解いてくれるのが、読売新聞の記事だった。「監査法人の陰には、ダイエー再建をてこに、不良債権問題の解決を一気に進めたい金融庁の姿が見え隠れする」。監督権限をもつ金融庁が、監査法人に圧力をかけたというのだ。これだと、疑問がすっきりする。

こうして、新聞各紙の報道を読み比べることを私は「横読み」と呼んでいる。横読みをすると、本当のことがかなりわかってくる。もうひとつ、新聞にだまされない方法がある。「縦読み」という方法で、同じ問題を続報で読むのである。

翌15日の朝日新聞は、「官邸、水面下での誘導、『竹中路線』鮮明に」というタイトルで、銀行の圧力は機構を活用したい金融庁の意を体していたと伝えている。また、毎日新聞は「二橋正弘官房副長官は杉山秀二経産省事務次官を呼び『民間金融と民間企業金融機関との話し合いということを踏まえた対応』を指示した」と、官邸から経産省にかかった圧力を具体的に書いている。自主再建でダイエーを支援してきた経産省にダイエー問題からの撤退命令を出したのだ。

テレビ報道は、情報量の多い映像を伝えられる反面、時間の制約から深い掘り下げができない。だから、メディアにだまされないためには、普段から新聞を縦読み、横読みするしかないと私は思う。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎