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郵貯マネーは本当はどこへ行く?

更新日:2004年10月07日

郵貯資金運用の基本方針は「民間金融機関への影響、追加的な国民負担の回避、国債市場への影響を考慮した適切な資産運用」が前提。郵貯マネーへの入り口も出口も、騒がれているほどに大きな流れは形成しないのかもしれない。
 


 
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郵貯と郵保の株式を民営化後10年以内に売却

9月10日の臨時閣議で、政府は自民党の了承を得られないまま、郵政民営化の基本方針を閣議決定した。議会制民主主義で、内閣が与党の反対を押し切るというのは、極めて異例の事態だ。

内閣がそこまでしてこだわった改革のポイントは、郵便、郵便貯金、郵便保険、窓口ネットワークという4事業の完全分割だった。なぜ完全分割にこだわったのかといえば、郵貯と郵保の金融2事業の株式を、民営化後10年以内に完全売却するためだ。

全国ネットワーク維持のために、ある程度の政府資本を残さなければならない郵便事業と一体にしておくと、郵貯と郵保の完全民営化ができなくなる。逆にいえば、郵政民営化の最大の目的は郵貯と郵保の完全民営化にあるのだ。

郵貯と郵保を完全民営化する目的は、郵貯・簡保に向かっている350兆円の資金の流れを民間に取り戻すためだといわれる。民営化して、民間金融機関と同じ条件で競争すれば、官を肥大化させている資金の流れを変えることができるというのが、郵政民営化を主張する人が、共通して持ち出す論理だ。

銀行と競合するのは都市部だけ

しかし、民営化しても、郵貯への資金の流れは、そう簡単には減らないと思う。その最大の理由はネットワークだ。日本銀行の調査でも、「近所に店舗やATMがあり便利だから」というのが郵貯を選択する最大の理由となっている。実際、東京三菱銀行でも国内拠点数は815に過ぎないのに対して、郵便局のネットワークは、2万4700もある。農村部に行くと、金融機関は郵便局だけというところも多い。実際に、銀行との競合が起きているのは都市部だけなのだ。

もちろん、郵便貯金残高のうち大都市である東京、埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、京都、兵庫の8都府県が占める割合は45%もあるから、郵貯の信用が失われたり、郵便貯金の利回りが民間と比べて低くなった場合には、残高を減らしていく可能性も十分ある。実際、民営化の基本方針では、民営化後「郵便貯金の政府保証を廃止し、預金保険機構に加入する」としている。

大きな変化が起こりうるのは2017年以降

ただ、郵貯はもともと預入限度が1000万円だから、そもそもペイオフの対象にならないし、定期性預金の預金保険料率は0.08%だから、預金保険に加入して負担が増えたからといって、郵貯の利率が大きく下がることも考えにくい。

さらに、郵貯資金の運用については、基本方針のなかで「貸付等も段階的に拡大できるようにする」としているものの、「民間金融機関への影響、追加的な国民負担の回避、国債市場への影響を考慮した適切な資産運用」が前提となっているため、現実問題として企業融資を拡大して郵貯が大きな不良債権を抱え込むことも当面はないだろう。

結局のところ、現在でも郵貯の自主運用分の8割を占める国債・地方債での運用が今後も主流となり、郵貯マネーは、入り口でも出口でも、さほど大きな変化を起こすことはないのではないか。もちろん完全民営になって政府の管理下から外れれば、話は別だが、それは早くても2017年のことなのだ。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎