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企業再生ファンドはいつまで儲け続ける?

更新日:2004年09月09日

連日のように経済ニュースの話題となる企業再生ファンド。高額の報酬から中途採用市場での人気も高い。救世主かハゲタカか、評価は真っ二つだが、デフレからインフレへと転じつつある局面で、はたして、どこまで儲け続けるのだろうか?
 


 
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1210億円→1兆円の錬金術

企業再生ファンドほど、評価の分かれる業種はないだろう。ある人たちは、誰も投資をしてくれなくなった日本に投資資金を持ち込み、企業を再生してくれる救世主だと讃え、一方それに反対する人たちは、日本の企業資産を二束三文で買い叩き、濡れ手に粟の大儲けをするハゲタカだと企業再生ファンドを非難する。

正直言って私は後者の立場をとっているが、彼らの評価が極端に分かれる理由は、彼らがメディアに登場することを好まないため、その実態がなかなか世間に伝わらないからだろう。

ただ、ときどき投資ファンドが何をやっているのか新聞情報でも明らかになる。やはり投資ファンドは大きく儲けている。たとえば、破綻した日本長期信用銀行はのれん代として、わずか10億円で日本政府からリップルウッドに売却された。その後、リップルウッドは投資組合を作り、新規に1200億円の資本を入れて新生銀行を設立した。

つまり、リップルウッドは、1210億円で新生銀行を買ったことになる。今年、その新生銀行が株式公開を果たしたが、初値による時価総額は1兆円を超えた。わずか数年で8倍の錬金術だった。

デフレが止まればファンドは大儲けできない

同じリップルウッドは、2600億円で取得した日本テレコムを、ソフトバンクに3400億円で売却して800億円の利益を出した。2600億円の投資で800億円の投資だと、リップルウッドの投資利回りは3割のようにみえるが、そうではない。じつは、リップルウッドの投資金額は300億円に過ぎない。残りの買収資金は銀行が融資をしている。だから投資利回りは167%なのだ。

それだけ儲かるビジネスをしているから、そこで働く人の処遇も桁違いだ。だいたいチーフコンサルタントクラスで年収は1億円、その上司のアメリカ人は、年収10億円と言われる。だから、中途採用市場でも企業再生ファンドは一番の人気就職先だった。

ただ、企業再生ファンドにも弱点がある。それは、濡れ手に粟のビジネスができるのは、デフレが続いているあいだだけということだ。たとえば、ダイエーは今年の4月に瞬間的に600円を超す株価がついていた。それが産業再生機構送りの噂が高まり、竹中大臣の「問題先送り型の解決策は望ましくない」との発言で、一気に170円まで値を下げた。わずか4カ月で7割以上の株価下落だ。

途端に、増資に応じようとする企業再生ファンドが複数名乗りを上げた。当然のことだ。ダイエーの企業価値はほとんど変わっていないのに、ダイエーが7割引きで買えるのだ。手を挙げないほうがおかしい。

しかし、そうしたおいしい話が出てくるのも、デフレで地価が下落し続けているからだ。もし、地価の下落が止まれば、銀行は融資策を二束三文で売り払うような真似をしなくても済むようになる。なぜなら、そんなことをしなくとも、経営が完全に行き詰まっても、担保を処分すれば融資は回収できるからだ。

企業再生ファンドが大儲けできるのは、デフレが続くあと1〜2年。企業再生ファンドに就職する人もそれを薄々わかっているから、短期で高額の報酬を得ようとするのだろう。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎