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中国ブームの深層に迫る

更新日:2004年07月15日

活況を呈する中国ビジネス。しかし、実際にどれだけの企業が中国ビジネスで利を得ているのだろうか。見えないコストも計算すると日本とのコストの格差は3割〜4割という見解もある。ブームの深層に迫ると――?
 


 
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人民元切り上げへの資本流入圧力が発生しない理由

政府による「景気抑制策」にもかかわらず、中国経済の過熱が止まらない。国家情報センターの予測では、今年4〜6月期の経済成長率は11%前後に達する見通しだという。

30%を超える輸出の伸びが所得を増やし、その所得が内需を拡大するという好循環が続いているのが高成長の基本的な要因だが、7%を超える経済成長をもう14年も続けているのだから、普通であれば経済成長率が鈍化してくるはずだ。それが、一向に減速の気配をみせないのは、何より中国の為替が実質的に米ドルに対して固定されているからだろう。

昨年来、アメリカをはじめとする先進国は中国に対して人民元を切り上げるよう要求し続けてきた。しかし、中国当局は、その要求を「時期尚早」と斬り捨てている。いくら当局が固定相場を守ろうとしても、投機筋に狙われたらひとたまりもないというのが、アジア経済危機のときの経験だった。

これだけ中国経済の成長が続けば、中国への資本流入が拡大して、為替を引き上げる方向の力が働いて当然だ。ところが、中国には為替を切り上げるほどの資本流入圧力が発生していないのだ。

その最大の理由は、中国がまだ先進国の共通ルールの下に入っていないということだろう。たとえば、中国企業に株式投資をしようと思っても、投資できる銘柄は限られているし、会計基準も国際ルールに準拠していない。

直接投資も同じだ。せっかく中国に進出しても、進出後に「事業許可は出せない」といってみたり、仕入れが難しくなったり、突然最低賃金を引き上げてきたり、売掛金がほとんど回収できなかったりと、中国ではあらゆるトラブルが発生する。だから、いくら低コストや現地消費市場の大きさが魅力でも、なかなか進出を決断できない企業が多いのだ。

目に見えない中国ビジネスのコスト

じつは、輸出メーカーの人に聞くと、中国ではさまざまな目に見えないコストがかかるため、日本と中国の間に存在するコスト差というのは、3割〜4割に過ぎないのだという。だから、もしも中国が大幅な為替の切り上げを行なうと、日本メーカーの反転攻勢がはじまることになる。中国政府はそのことがわかっているから、頑として人民元の切り上げに踏み切らないのだろう。

しかし、WTOに加盟したこともあり、中国がいつまでも国際ルールを無視し続けることはできない。いずれは、人民元は切り上げに向かうだろう。問題はその時期だ。

証拠があるわけではないのだが、中国は日本の製造業が息絶えるのをひたすら待ち続けているのではないだろうか。中国にシェアを奪われるなかで、日本の製造業は、次々に倒産、廃業あるいは海外移転に追い込まれている。

この変化が続いて、日本の製造業が壊滅した時点で、中国政府は人民元の大幅な切り上げに踏み切る。しかし、そのときすでに中国製品なしでは生活ができなくなっている日本は、すでに生産能力を失っているので、高くなった中国製品を買わざるを得ない。

つまり、このまま放置しておくと、元切り上げで中国バブルが終わり、安定成長に移行する時期に、日本は輸出を回復できないまま中国からの輸入が増えるという二重苦に落ち込むことになるのではないだろうか。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎