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消費は本当に復活したのか

更新日:2004年06月17日

個人消費が拡大したと報道されているが、給料が増えたという報道は聞かない?この現象はどんな結果をもたらすのか。給料が増えずに消費が増えれば、貯蓄の切り崩しが続くだけだ。消費は本当に復活したのだろうか――。
 


 
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賃金が減るなかで消費が拡大

5月18日発表された実質GDPは年率換算で5.6%成長という高成長だった。とくに成長を牽引したのは、消費の動きだ。民間最終消費支出は、年率換算の実質で4.0%、名目でも2.8%の成長を果たしたのだ。消費が増えはじめれば、景気回復は本格的なものになる。

だから、これは望ましい傾向といえる。しかし、今回の消費回復には、手放しで喜べない事情がある。それは、雇用者報酬の動きだ。雇用者報酬というのは企業からみれば人件費総額になる。GDP速報によると、季節調整済みの雇用者報酬は、前期比で1.4%減となった。

つまり、サラリーマンに支払われた報酬総額は、年率で5.6%もの大幅減となったのである。賃金総額が大幅に減るなかで消費が急拡大するという奇妙なことが起こったのが、今回のGDP統計なのだ。

なぜこんなことが起こったのかを確かめてみよう。まず、雇用者報酬を前年同期比でみると、2.8%の減となっている。一方、厚生労働省の「毎月勤労統計」によると、今年1〜3月期の現金給与総額は、前年比で1.7%減っている。つまり、雇用者報酬のほうが賃金よりも大きく下がっているのだ。これは、給料の高い正社員から給料の安いパートやアルバイトへのシフトが続いているからであろう。

いずれにせよ、全体としてみれば、サラリーマンの収入が大幅に減っていることは事実だ。そのなかで消費が増えている原因は、消費性向が上がっていることしか考えられない。GDP速報では、公表される情報が限られているために家計の消費性向を計算することはできない。そこで、擬似的な消費性向を把握するために、家計消費支出を雇用者報酬で割った数字の動きをみよう。

給料が下がっても生活を切りつめられない現実

昨年4〜6月期から四半期ごとにこの数字を示すと、104.0、105.9、106.3、そして今年1〜3月期が108.5となっている。やはり、消費性向の上昇が消費を引き上げているのは、間違いなさそうだ。

そこで消費性向の上昇がどのような階層で起こっているのかを確認するために、「家計調査」の年間収入5分位で消費性向の動きをチェックすると、第2階級(二番目に年収の低い階級)の消費性向は下がっているが、第1階級、第3階級、第4階級が急増、第5階級が横ばいという結果となっている。つまり、金持ちはさほど消費を増やしていないが、中堅サラリーマンは給料が下がっても、生活費を切り詰められないでいるということなのだろう。

ちなみに第2階級の年収は445万〜586万円となっている。この年収の階層は、まだ子供を持っていない人が多いので、生活にいくらか余裕がある。本当に年収の低い第1階級と教育費負担が重くのしかかる第3階級、第4階級で消費性向が上がっているというのは興味深い。

景気回復ムードのなかで、消費者は消費性向を上げて消費している。しかし、それは裏返せば貯蓄を減らすことを意味するので、消費拡大の動きは長続きしないだろう。貯蓄がなくなればそこで終わりだからだ。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎