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森永卓郎の経済探偵録
中小建設業はどう生き抜く!?

更新日:2007年11月08日

公共工事の激減によって中小建設業者が苦境に直面している。どのような手段で生き残りを図っていくかは、まだ解答が見つかっていない。しかしヒントはある。団塊世代の移住先として、地方中核都市の近郊にユニバーサルデザインによる町作りが発生すれば、そこに中小建設業の事業機会を見出せるかもしれない。
 


 
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地方では経済の疲弊で民需を期待できない

中小建設業者がいま大きな経営の行き詰まりを迎えている。小泉構造改革のなかで公共事業抑制が強力に推し進められたからだ。地方予算の分も加えた公共事業費は、2001年度からの5年間で3分の2に減った。そうした公共事業削減という流れは、安倍内閣、福田内閣と変わっても、ペースが落ちこそすれ、基本的な方向性は変わらない。参議院選挙で、農村部が中心の一人区で自民党が惨敗したにもかかわらず、来年度予算の公共事業費は3%カットの方針が堅持されているのだ。

そうしたなかで、とくに地方の中小建設業者が新たな仕事を獲得することは極めて困難だ。東京のゼネコンは、公共事業がダメなら民需を獲得することで事業量を確保できるが、地方では、経済そのものが疲弊しているなかで、民需も拡大が期待できない。しかも、もともと、雇用の場が、役場と農協と建設業者しかないといわれる地方では、他業種への転換も困難を極めるのだ。

東北から北海道の建設業者は、雪で建設作業ができない冬場の時期を、自治体から受託した除雪作業を行なうことでしのいできたが、地球温暖化にともなう雪の量の減少と自治体の除雪予算の絞り込みにともなって、除雪の作業量も減少してきている。

それでは、一体どうしたらよいのか。ひとつの試みが行なわれているのは、建設業者の介護ビジネスへの業態転換だ。実際にいくつかの建設業者がそうした取り組みをはじめている。これは、方向としては正しい。どうせ業態転換をするなら、雇用ニーズの伸びが高いところにシフトしていくのが有利だからだ。

雇用吸収力のある仕事といえば介護関連だが・・・

「国勢調査」の職業小分類で、平成12年から17年にかけて、どの職業が伸びたのかをみると、伸び率の上位5職業は、1位がホームヘルパーで144.9%(平成17年:338千人)、第2位が介護職員で94.9%(699千人)、第3位が自動車組み立て作業者で40.0%(144千人)、第4位が「他に分類されないサービス職業従事者」で38.5%、第5位が「その他の社会福祉専門従事者」で35.5%(288千人)の順となっている。

つまり、いま雇用吸収力のある仕事といえば、介護関連ばかりなのだ。しかも、高齢化はまだまだ続いていくから、介護関連のビジネスは、これからもどんどん伸びていく。しかし、これまで建設業から介護ビジネスへの転換がうまくいったという話は、ほとんど聞かないし、取り組もうとしている建設業者が増えてきているとも聞かない。

その理由は、労働需要の伸びは高くても、介護ビジネスは介護保険の給付単価の切り下げ以降、とくに訪問介護型のビジネスで付加価値が大幅に低下し、厳しい労働条件の割には賃金の額が非常に安いからだ。また、介護ビジネスが必要としている職業能力と建設業が必要とする職業能力が、かけ離れており、簡単に業態転換ができないという事情もある。建設作業者が簡単に介護福祉士とか看護師になれないのは、少し考えれば明らかだろう。

そうしたなかで、中小の建設業者、とくに地方の建設業者がどのように生き残りを図っていけばよいのかは、まだ誰も解答を見つけ出せていないというのが現状ではないだろうか。都会に出稼ぎに行って、ゼネコンの下請けをすれば仕事はあるが、それでは高度成長期に農村から都会に大量の労働力が出稼ぎにでた時代と同じことになってしまう。やはり、地元での雇用が確保されなければならないのだ。

私は、次のように考えている。雇用は生産の派生需要だから、生産活動のないところに、雇用は生まれない。ところが、いま地方には、その生産活動がないのだから、建設業者がその能力を生かして、生産活動そのものを作り出していかなければならないのだ。

団塊世代の移住先の町作りに建設需要

時代はまさに団塊の世代の大量退職時代だ。団塊の世代には、老後の人生設計でふたつの方向性を考えている人がいる。ひとつは、交通が便利な都心部に住んで、おしゃれで、強い文化的刺激のなかで暮らしていきたいと考える人たちだ。もうひとつが、都会の生活に疲れて、ゆったりと田舎暮らしをしたいと考える人たちだ。

都会暮らしをしたいと考える人たちへの建設業の対応は、大都市のゼネコンを中心にこれまで十分に行なわれてきた。ウォーターフロントの高層マンションがいくつも建てられたし、最近では都心部で安全性を重視したゲーテッド・マンション(住民しか門扉のなかに入れないマンション)もブームになっている。

しかし、田舎暮らしのほうは、じつはさほど対応が進んでいない。田舎暮らしには、新築の必要性があまり高くないという事情もあるが、農村部で暮らし続けることが、都会で人生を送ってきたサラリーマン層にはなかなかむずかしいからだ。文化的刺激も少ないし、濃すぎる人間関係にもなじめない人が多いのだ。

ただ豊かな自然と一定の都市機能、そしてドライな人間関係のすべてを同時に獲得する方法がある。それが地方中核都市の近郊に住むことだ。土地は十分にある。そこに、引退した人がゆったりと暮らせるユニバーサルデザインの町自体を作り上げていくことができれば、中小建設業者の活躍する場は大いに広がるだろう。

そして、年金の所得を持った住民が増えれば、その住民がさまざまな消費をしていくので、関連する商業やサービス業の生産が生まれる。そうした産業は、高齢者を含むすべての年齢層の雇用機会を拡大していくことになるのだ。

もちろん、そうした大規模な開発や住民の募集は、中小建設業者ではとてもできないから、自治体を巻き込み、そして中小建設業者が連携するなかで、やらなければならない。資金については、開発の後に、戸建て住宅やマンションの分譲や賃貸で収入が得られるのだから、公共事業費をつぎ込まなくても、PFI方式(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ:民間の資金と経営能力・ノウハウを活用し、公共施設等の設計・建設・運営をする)で行なうことは可能だろう。

もちろん、この事業はまだどこも成功していないから、大きなリスクがあるのは事実だ。しかし、このまま何もしなければ、地方の中小建設業者はただ衰退していくだけなのだ。

プロフィール

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究員
獨協大学特任教授  森永卓郎