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ミニバブルの行方を見通す

更新日:2004年05月20日

株価は回復したが、日銀はデフレが続くと予測。7月の参院選後に金融引き締めが実施されれば、株価が失速してミニバブルは消え、ふたたび低迷の時代を迎える可能性も出てきた。
 


 
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ふたつの原因で株価が回復

この1年間、日本の株式市場は絶好調だった。4月末の日経平均株価は1万1762円で、ほぼ1年前の昨年4月28日につけたバブル崩壊後の最安値を55%も上回っている。政府は「構造改革の成果が現われてきた」と胸を張っているが、もちろん株価が上昇したのは、構造改革の成果ではない。構造改革はさほど進展していないし、そもそも景気と構造改革は次元の違う話だからだ。

株価が回復した原因はふたつある。ひとつは量的金融緩和だ。一昨年4月から1年間にわたって絞り込み続けられてきたマネタリーベース(現金+日銀当座預金)の伸び率は昨年4月に11.5%にまで落ち込んでいた。それを日銀は、5月16.7%、6月20.3%とわずか2カ月でほぼ2倍の伸び率にしたのだ。

もうひとつは、昨年5月に事実上国有化が決定されたりそな銀行の処理に際して、株主責任を追求しなかったことだ。このふたつの金融「緩和」策によって金融不安が遠のき、急速な株価回復がもたらされた。実体経済がよくなったという人もいるが、昨年4月も、大手企業の決算はさほど悪くなかったのに、株価は最安値をつけた。

また、昨年4月から7月にかけて、メガバンク株、不動産株、そしてクズ株と呼ばれていたゼネコン株が劇的に値を飛ばしたことも、金融緩和の効果を物語っているだろう。だから私は今回の株価上昇を安心してみていた。ところが今年3月頃から、株価に違和感を感じるようになった。

日銀はデフレが続くと予測

たとえば、今年3月のマネタリーベースの伸び率は11.9%と大幅に絞り込まれた。その結果、為替市場は円高に向かい、3月末には、1ドル103円台まで円が急騰した。しかし、金融引き締めにもかかわらず、株価は高値を更新していったのだ。経済のメカニズムが無視された原因は、ミニバブルだと思う。

証券市場の店頭は個人投資家で溢れ、バブル期を超える取り引きが連日続いた。この1年で株で儲けた人たちが、売買を続けたから、バブル期同様の株高、円高、債券高のトリプル高が続いたのだ。

このミニバブルが今後も続くのかどうかは予断を許さない。個人投資家の売買が増えたといっても、デイトレーダーが増えただけで、本格的に個人金融資産が株式市場に戻ってきたわけではない。

さらに、株価が失速する可能性を示す兆候もある。日銀が4月28日に発表した「経済・物価情勢の展望」で、今年度の消費者物価変動率をマイナス0.2%と見込んだのだ。物価をコントロールできる日銀が、デフレが続くとしたのだから、デフレから脱却できるはずがない。

もうひとつの不安の種は金融庁の動きだ。4月まで行なわれていたUFJ銀行の特別検査は、頭取の交代や自己資本比率8%割れにこそ至らなかったが、その寸前までUFJは追い込まれた。ここまで追い込まれると、今後UFJは金融庁の言いなりになるしかない。

無風で自民党の圧勝といわれる参議院選挙が終われば、3年間国政レベルの選挙はない。だから、政府は何でもやれる。そこで、ふたたび金融引き締めと不良債権処理の加速化が断行されれば、株価のミニバブルは跡形もなく、はじけるだろう。

プロフィール

UFJ総合研究所 経済・社会政策部
主席研究員 森永卓郎