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森永卓郎の経済探偵録
日本航空の経営再建問題は日本の縮図

更新日:2010年01月13日

 遅々として進まない日航の経営再建。本稿で森永氏は、問題の本質を摘出し、解決の方法を提示している。
 


 
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日本航空の企業年金問題の本質

日本航空の経営再建が、遅々として進まない。最大の障害になっているのが、企業年金の積み立て不足の問題だ。日本航空の企業年金は3300億円もの積み立て不足を抱えており、その穴埋めが経営上の大きな足かせになっているのだ。

メディアは、日本航空のOBが厚生年金と企業年金を合わせると月額50万円もの年金を手にしていることを問題視しているが、そうした人は例えば退職金の半分を年金払いに回しており、また日本航空の企業年金が不正をしたり、運用に失敗したりしたわけではない。

問題は、日本航空の企業年金が4.5%という高い予定利率を設定していたことにある。低金利が続くなかで、そんな高い利回りでの運用が可能なはずもなく、実際の運用利回りが低迷するなかで、積み立て不足が重なってきてしまったのだ。

しかも実は、4.5%という予定利率が高すぎたというわけでもない。他企業の企業年金でも似たり寄ったりの予定利率は設定されているし、公的年金の予定利率も5.5%に設定されていた。年金の運用は長期にわたる。そのなかで、日本のデフレが長期化し、低金利の状態が長く続いたツケが噴出しているのだ。

だから政府は、日銀を促して、まともな金利が付くように安定したインフレ経済に移行させなければならない。さもなくば、金利情勢に照らして、予定利回りを強制的に引き下げることができるような法整備をしておかなければならなかったのだ。

いま多くの企業年金が日本航空と同じような状況に置かれているのだから、いまからでも政府は対応を図るべきだろう。もちろん、予定利率を引き下げれば、年金受給者の生活設計がおかしくなってしまうから、本当は、デフレを脱し、名目金利が高くなるようにすることが一番望ましいのだが、残念ながら、すぐには間に合わないのが現実だから、思い切った利回りの引き下げしか手がないだろう。

何故、日本航空だと赤字でFDAだと黒字に

同じことは、日本航空の経営再建方式そのものについても言える。日本航空はすでに路線の大幅な縮小を断行することで、採算性を向上させようとしている。しかし、路線の縮小をすれば、地方空港の空洞化が進行し、地方経済に深刻な打撃を与えるのは確実だ。しかし、縮小均衡はデフレを悪化させるだけだ。本当に縮小均衡は避けられないのだろうか。

そこで一つの方向性を示したのが、フジドリームエアライン(FDA)が日本航空が撤退する路線を引き受けると表明したことだ。物流大手の鈴与が設立したFDAは、09年7月から静岡空港を拠点に、静岡―小松、静岡―熊本、静岡―鹿児島の3路線を運行している。そのFDAが、日本航空が撤退する静岡―福岡、松本―福岡、松本―札幌の3路線を引き取る意向を表明したのだ。

何故、日本航空だと赤字で、FDAだと黒字になるのか。使用する航空機は、日本航空もFDAも、70席台のリージョナルジェットと呼ばれる小型機で、基本的には違いはない。長野県はFDAに対して着陸料を当面無料にするなど優遇策を講じる予定だが、日本航空が撤退をちらつかせて交渉すれば、同じ待遇は得られただろう。

やはり一番の違いは人件費だと思われる。FDAのパイロットの年収は資料がないのでよく分からないが、日本航空のパイロットの年収は平均1900万円台だとされている。アメリカの小型機のパイロットの年収は3万ドル程度だ。日本航空が世界と戦っていくためには、世界並の給料にしなければやっていけないのは当然だ。だから、私は企業年金だけでなく、賃金水準も引き下げないといけないのではないかと思う。

路線をどんどん縮小していけば、当然運行業務に携わる従業員のリストラが避けられなくなる。しかし、日本全体としては、それは大きな損失となる。なぜなら、パイロットにしても、キャビンアテンダントにしても、整備士にしても、せっかく磨き上げてきた職業能力が、仕事を失ったとたんに無駄になってしまうからだ。賃金水準を下げることで、路線を増やし、雇用を増やすことができるなら、従業員も、航空機の利用者も、そして地方経済も、より幸せになることができるのだ。

もちろん、賃下げを安易に認めるべきではない。しかし、会社が存亡の危機に立たされた時に、私は賃金よりも、まず雇用を守るべきだと思う。賃金は経営状態が戻ったら、また上げてやれば元に戻せるが、一度失った雇用は、二度と取り戻すことはできないからだ。

※編集部:この原稿は09年12月14日にご入稿いただいたものですので、状況が変化している場合もあります。

プロフィール

獨協大学経済学部教授 森永卓郎