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森永卓郎の経済探偵録
“年収崩壊時代”が到来!

更新日:2007年10月11日

サラリーマンの平均賃金が下がっているのは非正社員の増加が原因だが、正社員でも賃金が期待通りに上がる時代ではない。年収を上げる目的で踏み切るはずの転職でも、転職の仕方を間違えている人が多いことから、年収が上がるケースは約半分。この厳しい時代にサラリーマンはどう対処したらよいのだろうか。
 


 
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非正社員が増えるほど平均賃金が下がっていく

国税庁が発表した06年の「民間給与実態調査」によると、ひとり当たりの年間給与は435万円と、前年よりも2万円低下して、9年連続の減少となった。今回の調査結果の大きな特徴は、低所得層が格段に増えたことで、年収200万円以下の層は、前年よりも42万人増の1023万人となった。年収200万円以下が1000万人を超えたのはじつに21年ぶりのことだ。

景気回復がはじまったのが2002年1月だから、5年を超える景気拡大が続いているのに、サラリーマンの年収が下がり続けるというのは、まさに「年収崩壊」の時代到来といってもよいのだが、そのなかで、われわれはどう生き残っていったらよいのだろうか。

私が、まず強調したいのは、絶対に正社員の地位を確保すべきだということだ。国税庁の統計では直接はわからないのだが、いまのサラリーマンの年収低下は、正社員の給与が切り下げられることで起こっているわけではない。日本には「労働条件不利益変更禁止の法理」というものがあって、企業は社員の賃金を勝手に下げることはできないのだ。現に「賃金構造基本統計調査」によれば、一般労働者の決まって支給する給与は、2001年が33万3300円で、2006年が33万900円と、ほとんど減っていないのだ。

それでは、なぜ国税庁統計の平均年収が下がっているのかといえば、賞与減少の影響もあるが、一番大きいのは、国税庁の統計には、パートタイマーなどの非正社員が含まれているからだ。

実際、『労働力調査』で、雇用者全体に占める非正社員の比率をみると、02年1〜3月期に28.7%だったのが、ほぼ一貫して上昇を続け、07年1〜3月期には33.7%と過去最高を記録している。一方、2006年の「賃金構造基本統計調査」によると、正社員の平均年収が523万円であるのに対して、正社員以外の平均年収はちょうど半分の267万円に過ぎない。だから非正社員が増えるほど、平均賃金が下がっていくのだ。

転職で年収の上がる人、下がる人は半々の割合

もちろん、正社員に生き残れたとしても、賃金はほとんど上がらない。そのなかで、食料品やガソリンは値上がりしていくし、子供の教育費も増えて行くなど、生活費は年々増加していく。また、税金や社会保険料もアップする一方だ。だったら、思い切って転職してしまおう。そう思う人も多いはずだ。だが、冷静に考えてほしい。

私自身、転職を3回経験しているので、絶対に転職がいけないなどというつもりは毛頭ない。しかし、転職をするには、それなりの準備が必要なのだ。

2005年の「雇用動向調査」によると、転職で年収が上がった人は31.5%、変わらない人が37.4%、下がった人が30.2%となっている。転職というのは、そもそも給料を上げようとしてするものだ。ところが、現実は上がる人と、下がる人が半々なのだ。なぜ、そんなことが起こってしまうのか。

会社の経営不振で会社にいられなくなり、年収が下がるような転職をせざるを得ないというケースもあるだろう。しかし、私がもっとも多く聞くのが、あまり考えもせずに辞表を叩きつけてしまうケースだ。なかでも一番多いのは、「あんな馬鹿な上司の下では働けない」といって辞めてしまう人だ。

私は、正式な転職は3回だけだが、転勤や出向などで、これまで十数カ所の職場を経験してきた。その経験からはっきりいえるのは、「どの会社にも馬鹿な上司は必ずいる」ということだ。だから、馬鹿な上司がいることは、いきなり辞める理由にはならない。会社に残っていても、多くの場合、じっと我慢していると、馬鹿な上司は数年以内に人事異動でいなくなるものだ。

転職は猿の枝渡り――次の職を見つけてから実行せよ

私の知人に楽天証券経済研究所に勤める山崎元というアナリストがいる。彼は、一流企業ばかり13社も転職している。その彼が「転職は猿の枝渡り」と話している。猿が枝渡りをするときには、必ず次の枝をつかんでから、いままでつかんでいた枝を離す。そうしないと、地上に落ちてしまうのだ。転職も同じだというのだ。

確かに、先に辞めてしまうと、再就職を急がなくてはならないから、どうしても企業をきちんと選んでいる余裕がなくなる。そして、たまたまそのときに求人を出していた企業に就職するということになりかねない。だから年収が下がってしまうのだ。しかも、正社員の就職口があればまだいい。非正社員の就職口しかみつからなければ、それこそ年収半減だ。

いまや、転職のときというのは、年収を上げられる唯一に近いチャンスになっている。失業中で、何が何でも就職しなければならないという場合だと、どうしても足元をみられてしまう。同じ転職をするなら、現職のあるほうがずっと有利だ。現職があれば、現職と転職先を競合させることができるのだから、給与ダウンをのむ必要がなくなるのだ。

もうひとつ、有利な転職をするために必要なことは、普段から人的ネットワークを広げておくことだ。本当に有利な転職の機会は、ハローワークや民間の人材紹介会社に転がってはいない。それは、口コミや普段の仕事上のつながりのなかにあるのだ。

取引先や同業他社との付き合いのなかで、普段から自分を売り込んでおく。あるいは、「この人は自分のボスになる可能性がある」と思ったら、小まめに親切にしておき、印象づけておくのだ。私自身の転職も1回は新聞広告をみて応募したが、後の2回は、自分自身の上司と知り合いから紹介された先だった。

先にご紹介した山崎元氏は、普段からとても親切で優しい振る舞いを周囲にしている。とくに実力者に対しては謙虚な姿勢を欠かさない。そして、こう付け加えることを忘れないのだ。「僕はこう見えて、案外使いやすい部下なんですよ」。

プロフィール

三菱UFJリサーチ&コンサルティング客員研究員/獨協大学経済学部教授 森永卓郎