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森永卓郎の経済探偵録
ねじれ国会で景気対策足踏み

更新日:2008年05月29日

構造改革の本家であるアメリカがなりふり構わぬマクロ経済政策に乗り出している。小泉構造改革の時代には、財政政策や金融政策といったマクロ経済政策は効果がないとされていたが、いまやマクロ経済政策を実行しなければ景気は後退する一方だ。しかし、国会のねじれ現象が景気対策の足踏み要因になっており、日本経済は厳しい局面にさしかかった――。
 


 
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いまや説得力を失った「改革なくして成長なし」

東京商工リサーチによると、4月の倒産件数は前年同月比8.3%増と、4カ月連続前年比増加となった。このほか企業の業績下方修正が相次ぐなど、景気後退を懸念させるニュースが目立っている。そして、内閣府が発表した3月の景気動向指数では、景気の先行指数、一致指数、遅行指数のすべてが景気判断の基準となる50%を割り込むという異常事態までが発生した。

景気動向指数は、数カ月先取りする先行指数、景気と同時に動く一致指数、そして半年から1年遅れて動く遅行指数の3指標があるが、これらが揃って50%を割れになるのは、6年3カ月ぶりの事態だ。

しかも、景気動向指数の中身もよくない。たとえば一致指数は33.3%と、速報段階で数字が判明している9つの採用系列のうち、改善を示した指標は、大口電力使用量、所定外労働時間指数、商業販売額(小売)の3系列しかなかった。その一方で、鉱工業生産指数や稼働率指数などの生産関連の系列は、軒並み悪化している。

そもそも、今回の景気低迷は、アメリカのサブプライムローンのこげつきをきっかけとする信用不安だった。そこから生じたアメリカの景気低迷と円高、そして原油高・穀物高が加わった三重苦が日本経済を襲っているのだが、とくに、これまで景気の牽引車を務めてきた製造業が失速しているということは、景気にとって非常に危険な事態だ。

小泉構造改革の時代には、財政政策や金融政策といったマクロ経済政策は効果がないとされた。「改革なくして成長なし」だったのだ。いまだに、いまの日本の経済低迷は改革のスピードが衰えたからだという主張をする評論家もいるが、もはやそうした主張は説得力を持たない。構造改革の本家であるアメリカがなりふり構わぬマクロ経済政策に乗り出しているからだ。

今回の景気低迷を深刻に受け止めたアメリカは、日本円で10兆円を超える規模の戻し税減税を含む総額17兆円の減税を打ち出した。また、昨年秋からの累積で3.25%もの短期金利の引き下げを断行した。こうしたマクロ経済政策は、きちんと効果を発揮しており、アメリカの株価は一時、サブプライム問題が深刻化する前の水準を取り戻している。

ねじれ国会が続けば、景気後退は進む

だから日本も、いますぐ景気対策を打つ必要があるのだが、国会はまったく動きをみせない。国会のねじれで、与野党ともに身動きが取れないだけではなく、景気対策に関しては、民主党と自民党の間には深刻な対立がある。その対立は、一見、自民党の緊縮財政・増税路線と民主党の積極財政・減税路線の対立のようにみえるが、実はそうではない。緊縮財政・増税路線で景気が回復することなどあり得ないからだ。

まず、民主党は道路特定財源の暫定税率廃止を打ち出すなど、財政出動に関しては一定の理解がある。ところが、金融緩和に関して民主党は基本的に冷淡だ。銀行の不良債権処理を進めるために国民に低金利が押し付けられ、その結果家計が得るべき金利収入が大きく失われてきたというのが、民主党の基本的な考え方だからだ。だから新しい日銀総裁選びでも、日銀出身で金融引き締め派の白川方明氏をゴリ押ししたのだ。

一方の自民党は、金融緩和に賛成する議員は多いが、財政出動には一貫して反対している。なにしろ衆議院の3分の2の議席数を使って、せっかく下がったガソリンを再値上げしてしまうくらいだから、自民党の頭の中にあるのは財政再建のことばかりなのだ。

単純化すると、民主党は金融緩和が嫌いで、自民党は財政出動が嫌いだ。そのふたつがにらみ合ってちっとも動かないから、景気対策が打てないのだ。これだけ景気が悪くなってきて、景気対策の話が出てこないというのは、おそらく戦後初めてのことだろう。

白川日銀総裁が利下げの可能性を示す

財政政策と金融政策のどちらが効果的かという比較はむずかしい。どちらも効果はある。ただ、財政政策に即効性があるのに対して、金利の引き下げといった金融政策は漢方薬のようにジワジワと効いてくる。景気対策としては、財政政策と金融政策の併用が望ましいが、片方だけでももちろん効果はある。だから、国会のねじれを解消して、少なくともどちらかの景気対策が行なわれるようにしなければならない。

国会のねじれを解消する突破口は、解散総選挙しかないのだが、どうやら、当面は、それも難しくなってきた。5月8日に都内の日本料理店で若手議員と会食した小泉元総理が「いま選挙をすれば100議席、最大で150議席を失う」と語って、解散総選挙の大幅な先送りを示唆したからだ。

プロフィール

三菱UFJリサーチ&コンサルティング客員研究員/獨協大学経済学部教授 森永卓郎